師団基地の食堂で兵士たちとともに夕食。この日のメニューは鶏肉のもも焼きとスープだった。私にはかなりのボリュームだったが残すと失礼と思い、むせながらも食べきった。そしたら料理長が感動していた。「おお、あんたウチの兵隊なみだな。いくらでもおかわりしていいぞ」。(2010年5月/撮影:玉本英子)

任務が終わると、街に出ていた車両が続々と師団基地に戻ってくる。そして交代のチームが外に向かう。
毎回、毎回が「今日も無事だった」という安堵。そして「明日は殺られるかも」という不安。
志気の高い兵士たちにもストレスとなっているはずである。

夕暮れ時、師団本部の大食堂では、兵士たちが長い列を作って夕食にありついていた。
一日中、厳しい顔をしていた兵士たちの顔が一様にほころぶ。

みんな食べるスピードがすさまじく速い。だからといって黙々と食べているわけではない。
冗談を言いあったりして、なんとも楽しそうだ。

任務を終えたあと、兵舎で水タバコ(アルギリ)をふかす若いイラク兵たち。任務の話よりも、家族のことや流行のテレビドラマなどの話題が多い。(2010年5月/撮影:玉本英子)

塩味がきいた鶏肉は香ばしく調理されている。彼らの食べる速さに圧倒されながら、私もなんとか一気に食べ終えた。
そして、イラクはなんといっても食後は紅茶である。

ずっと行動をともにしていたサジード・マフムード少佐と、紅茶を飲みながら話しあった。
旧政権からの解放の名の下に何人もの自分の親戚や友人が命を落とし、いま、イラク人どうしが殺しあう状況になってしまったことはあまりにもつらい、と少佐は話す。

それはこの7年間で、いつ終わるともわからない悲劇と混乱におかれてきたほとんどのイラク人と同じ思いでもあった。
「治安が回復すれば、イラクはきっと立ち直る。そしたら、きっとアメリカを見返せるようにもなるさ。
日本もそうだったんだろう」
そう言って少佐は、紅茶をぐいっと口に流し込んだ。

私は、とまどいながらも、「そうね...」と、彼の言葉に少しだけうなずいた。
(つづく)
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