地雷・防爆対策を強化した装輪装甲車MRAP。上にある長いアームを伸ばして爆弾処理が出来る。(2010年5月/撮影:玉本英子)

映画「ハートロッカー」は、米軍の爆弾処理班を描いたアカデミー受賞作品だ。
イラク軍第2師団には爆弾・地雷処理を専門とする部隊がある。いわばホンモノのハートロッカーたちである。
一般の兵士のように銃弾が飛び交う戦闘の現場には出ないが、師団内で殉職率が最も高い部隊だ。
イラク軍の爆弾処理班は、米軍の専門部隊から数年間にわたる特別訓練を受けて編成された。第2師団では、爆発物の種類と処理の難易度によって4段階のレベルに分けられたチームからなり、総勢120名が所属する。

師団基地の一角にひときわ威圧的で大きな軍用車両が並ぶ。装輪装甲車MRAPだ。分厚い鉄の装甲。ルーフには長いパイプのような折りたたみ式アームが載っている。

この装甲車MRAPは、イラクとアフガンで地雷や仕掛け爆弾攻撃に悩まされる米国防総省が巨額の費用を投じて開発した。
仕掛け爆弾(IED)からの防御に特化した構造になっている。

車体にはいくつもの爆弾の炸裂跡が残る。処理作業中に爆発したものだ。中央の丸いフタは、車内から銃口をつきだして撃てる射撃孔。(2010年5月/撮影:玉本英子)

師団にはアメリカ製のMRAPの爆発物処理車2台のほかに数十台の装輪装甲車両が配備されている。
武装勢力はかつてのような銃撃戦で正面攻撃をすることは減った。現在は、仕掛け爆弾や自動車爆弾が攻撃にほとんどを占めるようになっている。
いま、イラクでもっとも多発し、一般市民を巻き込んでいるのが、こうした爆弾による攻撃だ。
私はこの部隊に密着し、爆弾処理の最前線を取材することにした。
(つづく)
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