MRAPの運転席。モスル市内の地図を確認しながら毎日、道路を走り、仕掛け爆弾の発見・撤去作業を続ける。(2010年5月/撮影:玉本英子)

路肩爆弾は道路わきに仕掛けられていることが多い。このため毎日、同じ道路をなぞるようにして爆弾をさがし、発見すればその場で無力化するか、別の場所に運んで爆破処理する。

同じコースだと待ち伏せされる可能性があるため、どの順番で道路を通過するかも頻繁に変えているという。
仕掛け爆弾は地雷のようにタイヤで踏めば爆発するのもあれば、軍用車両が路肩を通りがかったときに、近くにいる武装勢力メンバーがタイミングをあわせて遠隔操作でスイッチを入れて爆発させるものもある。
武装勢力が公開する攻撃の瞬間の動画は、こうしてあらかじめ待ち伏せした場所でカメラを構える者が待機し撮影している。

途中、装甲車の横を通過していく一般車にも兵士は注意を払う。すれ違いざまに自爆することあるからだ。自爆車両が男ひとりの運転手とは限らない。他人の車に仕掛けて遠隔操作で爆発させるという例も少なくないため、女性や子どもが乗っている車でさえ油断はできない。
数時間かけて車両がすすんだのはわずか数十キロほど。

MRAPは車体の底部がV字形になっている。地雷や仕掛け爆弾が地面で爆発した際の爆裂風を拡散させ、車体への影響を最小限にする。米軍はアフガンやイラクでの装甲車両をハンヴィーからこのMRAPに切り替えている。とはいえ、装甲が重いぶん加速や燃費が悪いうえに、大型爆弾で攻撃されればやはり簡単に吹き飛ぶ。(2010年5月/撮影:玉本英子)

「今日は発見できず。本部に帰隊する」
隊長の合図に私はホッとため息が出た。しかし、ほかの兵士は表情ひとつ変えようとしない。

発見処理をしても翌日にはまた爆弾が埋められていることもあり、イタチごっことなっているのが現実だという。
それでも、1日いくつもの爆弾が同時に爆発していた頃と比べれば、市民の犠牲者は減ったほうだ。

危険な任務にあたる兵士を支えているのは使命感と誇りだとレベル4班のアハメット・ガネム隊員(30)は話す。
「アメリカの先端技術を使っても、結局最後は手作業で処理する。みんな文字通り命がけの任務だ。でも誰かがこの仕事をしなければ、多くの市民が犠牲になる。使命を果たし終えるまで続ける。ただ、それが近い将来か、まだ何年も先のことかになるかはわからないけど」
そういって彼は窓の外を見やった。

分厚い防弾窓の外には黄土色の大地が広がっていた。
(つづく)
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