レベル4班は難易度が最も高い爆弾処理にあたる。隊員は対爆スーツを着用し遠隔操作の処理ロボットで爆弾を安全な場所に移動させるが、最後は手作業で処理する場合が多いという。(2010年5月/撮影:玉本英子)

 

モスルでは現在でも週に3~4個の爆発物が発見される。

昨年まではほぼ毎日、市内各地で数個の仕掛け爆弾や自動車爆弾が発見されていたからまだ少しは減ったほうといえる。
どこにでも爆弾が見つかるイラクでは、日本の警察のように冷却処理してから解体するようなことはしない。

自爆や迫撃弾攻撃などもあるため、爆発物処理はとにかく数をさばくスピードが求められる。
爆弾が仕掛けられるのは政府機関の車両が走る道路のほかに、市場や小学校など人の集まるところであれば、どこでも狙われる。

爆弾処理ロボットから送られる複数のカメラ映像をモニター画面に映し出して遠隔操作する。ラップトップ式になっていてMRAP車内から処理作業が出来る。写真は車内ではなく、処理班の施設での作業のようす。(2010年5月/撮影:玉本英子)

大きなラジコン戦車のような遠隔操作の爆弾処理ロボットを手馴れた操作で動かすのは、陸軍第2師団の「ハートロッカー」たち。米軍から数ヶ月にわたる訓練をうけて特殊工兵となり、この爆発物処理班に配属された。なかでもこの処理ロボットを使い、起爆装置を手作業で取り外せる高度な技術を持つのはレベル4班の隊員数人だけである。

アハメット・ガネム隊員が処理作業の手順を説明してくれた。
爆発物を発見すると、MRAPの装甲車内からアームを伸ばす。先端のカメラから送られてくる映像をモニターで見ながら、手元のコントローラーでロボットアームを操作する。

アームで無力化処理をするのではなく、とにかくこの処理ロボットとアーム作業で、人のいない場所までもっていって、そこから初めて処理作業を開始する。

すべて爆発処理できれば簡単だが、形状や威力が異なるため、路上の車両内部に仕掛けられて移動できないような爆弾や、構造が複雑なものは隊員自身が直接、手作業で処理する。

ジュースの紙パックに偽装した起爆装置。下から2本のニクロム線がのびている。紙パックを車が踏むと、線の先につながれた大型爆弾が爆発する構造。路上のゴミに紛れるようにして設置されていたものを発見し、無力化処理した。(2010年5月/撮影:玉本英子)

隊員は対爆スーツを着用しているが、爆発すれば手足は簡単に吹き飛ぶので、死ぬ確率をほんの少しだけ減らすという効果しかない。
これまで数十個の爆弾を処理してきたガネム隊員も、起爆装置のケーブルをニッパーで切断する瞬間だけは緊張で息が止まるという。
「処理が無事に終わると、いつも神様に感謝するんだ」。
年々、爆弾は複雑化していて、携帯電話の起爆装置にカチューシャ砲の砲弾を加工してつなげたものまであり、ケーブルを切断するにも、二重三重に偽装が施されるようになっている。

「考えてみれば、家族に会う時間よりも、爆弾と向きあってる時間のほうが長いな」
彼は浅黒く日焼けした顔を対爆スーツからひょっこりともたげながら、少しおどけて見せた。
(つづく)
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