爆発物処理部隊の隊舎の入り口に並ぶ殉職兵士の写真。隊員120人の同部隊で処理作業中に命を落とした兵士はこれまでに21名。昨年1年間がもっとも多く15名が殉職した。(2010年5月/撮影:玉本英子)

ロシアンルーレットは、6発装填できる回転式拳銃に1発だけ弾をこめて、引き金を引く「死のゲーム」だ。死の確率は6分の1。
第2師団爆発物処理部隊120名のうち、昨年だけで任務中に15人が死んでいる。じつに8人にひとりだ。

処理の難易度がもっとも高いレベル4班は8人構成。うち2名が殉職。4分の1が死亡ということは、ロシアンルーレットよりも死の確率が高いことになる。

2年前のイラク軍取材で、私が乗っていた高機動車ハンヴィーが武装勢力の仕掛け爆弾の爆破攻撃を受けた。防弾装甲とはいえ爆発の瞬間、車両は空中に飛び跳ね、直後に地面に叩きつけられると同時に激しくバウンドした。わずか数秒の出来事で、ようやくあとになって何がおきたかがわかったほどだ。

運よく無事だったが、どこからともなく爆弾で狙われるという恐怖を身をもって味わった。
「きみは神様に守ってもらったんだ」と兵士たちが言ってくれたのをいまでも覚えている。

処理した爆弾を手にする部隊の兵士たち。テレビのリモコン、ラジコンのおもちゃ、携帯電話。あらゆるものが起爆装置に使われる。部屋には無力化処理して回収した爆弾が数十個も並んでいた。(2010年5月/撮影:玉本英子)

いま、私の前に並ぶ殉職兵士たちの写真。神様は、彼らを守ってはくれなかったのか。
映画やドラマでは、爆弾の起爆装置の銅線を爆発直前に主人公が切断し、人びとから喝采をあび、ハッピーエンドとなる。

ここにいるイラク兵たちは、だれにも称えられることなく、毎日、ひたすら爆弾と向かい合い続けている。

「仕事のことは、家族には話さないようにしている。よけいな心配をかけちゃいけないから」
ガネム隊員は、わずかに目を細めた。

写真ひとりひとりの名前の横に刻まれた殉職の日付はどれも最近のものばかりだった。
「自由となった」はずのイラクで、彼らはなぜ命を落とさなければならなかったのか。
(つづく)
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