北朝鮮朝鮮労働党の機関紙である労働新聞によれば、現在、各地域の代表者が続々と平壌に集結しているという。写真は平壌市郊外で身分証を確認する保安員(警察官)。2008年9月 張正吉撮影 ©アジアプレス

北朝鮮朝鮮労働党の機関紙である労働新聞によれば、現在、各地域の代表者が続々と平壌に集結しているという。写真は平壌市郊外で身分証を確認する保安員(警察官)。2008年9月 張正吉撮影 ©アジアプレス

 

金ジョンウンは若すぎる?
問:金ジョンウンの年齢(28とも29ともいわれる)が若いというのは、北朝鮮の人たちの間ではどう受け止められていますか?
答:だからこそ、私のようなものが宣伝事業をどれだけたくさん行っているか...天下にあのような全知全能な人はいないくらいですよ、と。5歳のときに外国人とヨット勝負をして勝ったなどという、それでいて謙虚な人柄などという、全く誇張された話が上層部から伝えられてくるんです。

それをあちこちでどれだけ話をしたか...だからこそ、私は姿を現さないとも思うのです。顔が出れば「ああ、この人は本当にそんなにすごい人なのかな?」と思ってしまうのが人間ですから。いわば神のような見えない存在でなければならないのですよ。

問:金ジョンウンの「作られた」話を聞いた人々は、どう思っているのでしょうか?
答:我々の中でも気の合う人同士ではこう言います。「逆に考えればいい。全部反対の意味にとらえればいい」とね。私たち北朝鮮の人民がこれまでどれだけ国の言うことに騙されてきたか。もう騙されませんよ。

問:不満は相当広がっていると考えても良いのでしょうか?
答:私のようなエリートたちは、全て分かっています。分かっていながら、それでも生きていかなければ、今の地位を維持しなければ生き残ることができないから従うのです。

そんな考えの人が多いので、今やご機嫌取りだけが増えて、心から自国の人民のことを想う人は皆死んでしまいました。もちろん私も、周囲の気心知れた人たちも、脱北して中国に住めば今よりも良い暮らしができることは知っています。それでも「今は大変だけどなんとか耐えて、我慢して『その時』を待とう」と言い合っています。

李さんの話からは、北朝鮮のエリートたちといえども、後継者と目される金ジョンウンを冷めた目で見ていることが分かる。例え党代表者会で金ジョンウンに党ポストが与えられたとしても、実勢を握り後継者として地盤を固めていくのには時間がかかると思われる。次回は李さんが聞いた農村の人々の想いについてまとめてみる。北朝鮮農村の民心は全く離れてしまったという。(つづく)(整理:李鎮洙)
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