クラウン村。川向こうに開かれた畑から芋を掘り出す男の子。一般的な芋の食べ方は、囲炉裏の火で焼いた後、食用油と塩をつけてそのまま食べる。

クラウン村。川向こうに開かれた畑から芋を掘り出す男の子。一般的な芋の食べ方は、囲炉裏の火で焼いた後、食用油と塩をつけてそのまま食べる。

 

うまいタイミングで村人を促した。
二人っきりになった後、ウー・テェットンは言う。

「村人との関係は、ホント難しいんだ。さっきも、みんな『村が貧しいから学校を建てることができない』って言っていたが、山の中の村では立派すぎる教会を見ただろう」

明くる朝、このタストゥー村に、中国製の深緑の人民帽を軽く被ったひょろ長い男性が通りかかった。偶然にしては話ができすぎている。彼は、あのカカボラジに初登頂したアンセーさんだった。今は米国の環境団体の依頼を受けて、中国国境に近いマッコンガンという町を拠点とし、カカボラジ国立公園内を歩き回って自然調査をしているそうだ。

地図でそのマッコンガンという場所を確認してみる。なんとまあ、ほとんど中国国境である。よくもそんなところを中心にして活動していることだ。彼も、お兄さんのジャウスーさんと同じように背が高い。ひょろりとしたという印象だが、その身のこなしは、厳しい自然の山の中を駆け回る山羊かカモシカの姿を彷彿とさせる。やはり、彼はビルマの最北に暮らすチベット人のようだ。

宿泊先のジャウスーさんに伴われ、タフンダン村の顔役の家へ挨拶に行った。その、顔役氏の家の入り口にはチベットのタルチョが飾られており、家の中には、これもチベット民族特有のいろいろな文様が描かれている。ちなみにタルチョとは、チベットで「地・水・火・風・空」意味する五色の旗(布)のことである。
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