バグダッド・キリスト教会襲撃事件(2010年10月)が起きた現場を訪れた。教会の壁には銃撃で亡くなった女性の血の手形が残されていた。妊娠4ヶ月だったという。(4月27日 撮影:玉本英子)

 

イラクではイスラム武装勢力によるキリスト教徒を狙った襲撃事件があいついでいる。昨年10月31日にバグダッド市内で起きたカトリック教会襲撃・立てこもり事件では50人以上が死亡する惨事となった。その現場に入った。
サイダ・アル・ナジャッド教会はバグダッドの中心部に近い、カラダ地区にある。ここは、市内でも治安の良い地区のひとつだ。
教会の入り口には、犠牲となった信徒らの写真が並べられている。
聖母の肖像とブロンズの十字架が飾られた教会内の白い壁にはいまも無数の弾痕が散らばり、血しぶきが残る。犯人が自爆した場所は、黒く焦げ、石の床がえぐられていた。

教会はバグダッド市内でも治安が最も良いとされる地区にあり、市民は大きな衝撃を受けた。(撮影:玉本英子)

 

事件が起きたのは夕方5時半ごろ。およそ100人の信徒が祈りをささげていた。突然、銃声とともに13人の武装集団が教会に侵入、信徒を人質にとった後、治安部隊と銃撃戦になった。ろう城を続けたのち、武装集団のうち5人の男が体に巻いた爆弾を爆発させ、自爆死した。2人の司祭を含む信徒46人が死亡した。

信徒の女性サミア・パトロスさん(48歳)は小部屋に隠れて難を逃れた。
「教会内に響く銃声、子どもや女性たちの悲鳴。私たちはただ祈りを捧げていただけなのに、なぜこんな目にあわなければならないのでしょうか」と声を震わせる。
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