イラクの音楽専門衛星チャンネル、VINテレビの音楽ビデオクリップ。月に約7本制作する。映像レベルの高さから、イラクの有名歌手たちがこぞってVINテレビに制作を依頼しているという。

 

イラクではここ数年で衛星放送による音楽専門チャンネルがあいついで開局し、とくに視聴者参加型の歌謡番組が若者たちの人気を博している。
クルド系の若者に人気急上昇中なのが「VINテレビ」だ。

VINテレビは2007年に開局した24時間放送の音楽専門局で、クルド語を中心にアラビア語、英語の音楽ビデオクリップを流している。イラクのテレビ局の多くが財界人や政治団体が集めた資金で運営されるなか、VINテレビは資産家でもあるシャバン・スレイマン代表(45)らが運営する。政治色を排除したいという同氏の思いから、政治家や政党の支援を受けず、自らの財産を投げ打って開局にこぎづけた。

イラク北部ドホークにあるVINテレビスタジオ。局内では若いスタッフが番組収録などで忙しそうに駆け回っていた。制作プロデューサーはエジプト、レバノンから引き抜かれた者たちもいた。(2011年5月・ドホーク/撮影:玉本英子)

 

イラク北部ドホークにある放送センター内にはプロダクション部門があり、音楽ビデオクリップも独自に制作している。新人発掘から、作詞作曲、ビデオ制作までを担い、音楽ビデオは同局だけでなくイラク国外も含めたアラブ系のミュージックチャンネルに提供している。

有名ポップスターが登場するクリップでは自身が役者として出演。豪邸を舞台に絶世の美女と恋に落ちるまでのドラマ仕立てになっていた。政治や暗いニュースばかりのテレビ局に多くの人びとが疲れているのも、音楽専門チャンネルの人気が高い理由のひとつのようだ。
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