VINテレビのシャバン・スレイマン代表(45)は「イラクだけでなく、中東全域を視野に入れたビジネスとして考えている」と語る。 (撮影:玉本英子)

 

VINテレビの名が知れ渡ったのが、昨年放送された新人発掘番組「レイカ・ステラ(スターへの道)」だった。 番組オーディションには1100人が集まり、最終選考に5人が残った。だが、その中の2人が対立する部族の子弟であったため、部族を巻き込んだ争いまで発展し、1000人以上の視聴者がテレビ局に押しかける事態になった。

視聴者のひとり、ジャラル・アルイサさん(22)は、
「若者たちはそれほどVINテレビに夢中になったということ。これまでクルド音楽といえば、民族衣装を着て歌う映像しかなかったけど、今ではロックはもちろん、ヒップホップまである。親は『体の露出した女性の映像が出るテレビなんか見るな』と言うけど、これからも僕たちはVINテレビを応援するよ」と話す。

「クルド語圏は広く、クルド人はイラン、イラク、トルコ、シリアなどに3000万人ちかく暮らしている。アラビア語は湾岸諸国から北アフリカにおよぶ。イラクだけでなく、中東全域を視野に入れたビジネスとして考えている。必ず成功させますよ」
シャバン代表は自信を見せた。

爆弾事件や宗派抗争、政党間の攻防など政治や宗教をめぐる事件や話題が絶えないイラクで、華やかな音楽専門チャンネルは人びとに活気と希望を与えている。

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