報告をくれるチェ・ギョンオク氏も緊張し、われわれとの電話連絡も間隔が開きがちになった。中国の携帯電話の使用も「非社会主義行為」であり、当然取締りの対象だ。「暴風軍団」の動きを警戒して彼女も慎重になったのである。

二週間ほど連絡がなく心配し始めた頃、チェ・ギョンオク氏が明るい声で電話をかけてきた。

「市内中心部ではまだ、『暴風軍団』による厳しい取締りが続いていて密輸は大きく減りました。けれど、鴨緑江の上流の方では、奴らは賄賂をもらって 密輸の手助けを始めているそうです。密輸商人に聞いたんですが、要求される賄賂の額はこれまでの三倍近く。それでも儲けが出ているというんです。『他の場 所で「暴風軍団」が厳しく密輸を監視しているおかげで、自分たちの密輸品が高く売れるんだ』と。つまり、一番勢力の強い『暴風軍団』と組んで密輸を独占し ているわけですよ。『今のまま厳しい取締りを続けてくれたらいい』なんて笑って言ってました」。

どうやら鳴り物入りで現れた「暴風軍団」をもってしても、「国境地帯の甘い汁」の誘惑には抗い切れなかったようである。

その後、「暴風軍団」は検閲期間の終わりが近づくにしたがい賄賂を露骨に要求するようになり、最後は懐を膨らませて恵山を後にしたということである。

取材・整理 リ・ジンス
二〇一一年一〇月

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