◆当初協力的でなかった新宿区
冒頭で大田区 のトーヨーボール池上と対照的と書いたのは、旧東京厚生年金会館の解体をめぐっては新宿区が大きな役割を果たしたからだ。

だが、当初から区側の対応が保護者や住民に協力的というわけではなかった。むしろ業者寄りといわれても仕方のない対応ぶりだった。

2回目の説明会後の5月18日、保護者らは区の保育課を訪れ、工事の危険性を訴えた。同課は早急に解体業者に要望書を出すというので「事前に見せて欲しい。保護者の要望書といっしょに提出して欲しい」と頼んだが、区側は保護者の要望書を待たずに提出した。

このあたりから新宿区側の行動に保護者が不信感を持ち始める。
「区の保育課に協定がどうなっているのかと再三聞いた。『すみやかに』とかごまかされて、なかな か返答がなかった。不安を覚えた保護者が永倉さんと何度も訪問し、訴えたが区は工事の安全性などを説明できませんでした。それで濃度測定をやってほしいと頼んだ。保育課は『その必要があったら』というだけ。その必要はいつ誰が判断するのか説明もなかった」(「守る会」櫻井さんのシンポジウムでの発言)

しかも5月28日、保育園の園長からアスベスト濃度測定のためアスベストセンターが保育園に立ち入ってよいかと同区保育課に連絡したところ拒否される。また区に出した要望書に対する回答もなかった。

6月2日には保育課による説明会が開催されたが、解体業者の説明を繰り返す内容に終始。区側の「アスベスト対策については保育課はよくわからない」といった発言もあって、保護者 が猛反発した。結局、区側の工事に対する具体的な対応や要望書への回答、詳しい工事日程もないまま説明会は終わった。

6月11日の新宿区からの回答では、工事期間中に保育園でのアスベスト濃度測定が改めて拒否。一方、新宿労働基準監督署による立ち入り検査でレベル1しかないはずだった本館にもレベル3のアスベスト建材が見つかったほか、学園棟でも新たにレベル3建材が確認されたとの情報も入ってきた。

次々と新たにアスベストが見つかっていたにもかかわらず、同14日には解体工事が開始された。工事延期の要請について、区から必ず連絡するはずだったのが結局何の連絡もないままだった。当日に20人近い保護者が区役所に抗議に訪れると、午後遅くに同16日の説明会まで工事を中断する と連絡が入った。
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