女性誌「セイディ・スリヤ(レディ・シリア)」のサンプル記事。今夏の創刊を目指している【トルコ南部ガジアンテップ 1月撮影・玉本英子】

女性誌「セイディ・スリヤ(レディ・シリア)」のサンプル記事。今夏の創刊を目指している【トルコ南部ガジアンテップ 1月撮影・玉本英子】

3年目を迎えるシリア内戦。死者は13万を越え、国民の3割近くが家を追われた。対立の構図は政府軍と反政府組織に加え、イスラム勢力やクルド組織も台頭するなど複雑化。北部ではアルカイダ系組織が、強硬なイスラム主義による支配を拡大させつつある。

1月、玉本英子はトルコ南部でシリア難民を取材するとともに、シリア国内に入り、内戦下の人びとの声を記録した。いまも激しい戦闘が続くアレッポ県北部地域からの渾身の現地報告。

◆女性雑誌発刊へ~元脚本家の決意

シリア内戦は、女性たちの生活も引き裂いた。市場の買い物客が爆撃で狙われ、レイプなどの危険にもさらされる。なによりも深刻なのは、戦闘で夫を失い、未亡人となって、幼い子どもを抱えたまま生きるすべを失ってしまった女性が急増していることだ。戦乱で逃げ場を失った女性たちは、親戚や地区住民どうしで身を寄せ合いながら、わずかな食料でその日の命をつなぐ。
国内に取り残された女性たちに、生きる希望を持ってほしいと、女性向け雑誌発刊の準備が、隣国トルコに避難したシリア人難民たちのあいだで進められている。

雑誌は「セイディ・スリヤ(レディ・シリア)」と名づけられ、スタッフはシリア国内、国外合わせて9人。編集長のスルタン・モハメッド・マラックさん(42)が避難先のトルコ南部、ガジアンテップにあるアパートを仮事務所にし、自分の財産を切り崩しながら資金を捻出し、ようやく発刊の目途がたった。

スルタンさんによると、シリア国内ではこれまでにも多くの女性誌が流通していたが、政治や宗教、職業など、特定の読者層を対象にしているものがほとんどだという。スルタンさんは、すべてのシリア女性に向けた雑誌をつくりたいと話す。

かつては脚本制作会社を営んでいたスルタンさんは、シリア政府から演劇脚本で賞をいくつももらい、優遇された時代もあったが、苦しむ日々だったともいう。

「どの脚本も当局の検閲を受けることになっていた。自由に書きたいという思いと、政府の監視のはざまで悩み、自分自身で表現を抑えるようなことをしていた」と明かす。

その後、トルコへ脱出してから、自由な発想で雑誌をつくりたいと、女性誌創刊を決めたという。
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