登校時間になると、大学の正門に学生組織の幹部と教員たちが並び、学生の身だしなみを「検閲」する。制服をきちんと着ているか、髪は長すぎないか、染めて はいないか、女子学生の場合は化粧が濃すぎないかまで細かくチェックするのだ。「検閲」にひっかかると、生活総和の際に批判対象になり、労働作業に動員さ れたりもする。このため、学生は検閲を避けようと、壁を乗り越えて校内に入ったり、検閲が終わってから登校したりとあの手この手で対処している。

本を見ながら歩く女子大学生。シャツは最近流行の体にぴったりとフィットするタイプのもので規定から外れている。ハイヒールも履いているが、これは規定違反ではないとのこと。2013年9月平安南道平城(ピョンソン)市で撮影。写真アジアプレス
本を見ながら歩く女子大学生。シャツは最近流行の体にぴったりとフィットするタイプのもので規定から外れている。ハイヒールも履いているが、これは規定違反ではないとのこと。2013年9月平安南道平城(ピョンソン)市で撮影。写真アジアプレス

 

とはいえ、北朝鮮の大学生たちは、いつも清潔な制服を着ている訳ではない。動員の際には作業服で一日を過ごす。毎年、春と秋の農繁期になると必ず行われる 農村支援動員に始まり、閲兵式など国家行事への動員、6か月間におよぶ「教導隊(予備軍)」軍事訓練に加え、大学独自に行う社会事業への動員が重なり、む しろ制服を着ている時間の方が短いくらいである。2012年には、「平壌10万戸アパート建設」を完遂させるため、全国の大学が1年間休校となり、学生た ちが建設現場に動員される事態も発生した。

故金正日氏を顕彰する行事に動員された大学生たち。2013年10月北部の国境都市で撮影。写真アジアプレス
故金正日氏を顕彰する行事に動員された大学生たち。2013年10月北部の国境都市で撮影。写真アジアプレス
白頭山のふもとを行軍する大学生たち。大学生は在学中に必ず一度は故金日成主席の「偉大性」を学ぶため白頭山を訪れ、100キロの行程を徒歩で行軍する。2013年6月北部の国境都市で。写真アジアプレス
白頭山のふもとを行軍する大学生たち。大学生は在学中に必ず一度は故金日成主席の「偉大性」を学ぶため白頭山を訪れ、100キロの行程を徒歩で行軍する。2013年6月北部の国境都市で。写真アジアプレス

 

各種動員があまりに多く、また突然行われることもあるため、学生たちの中には、作業用の服を校内に常備する者や、制服の代わりに作業服を着て登校する者もいる。このように、今の北朝鮮の大学生にとっては、作業服が制服といっても過言ではないのである。

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