北朝鮮人権調査委員会の報告会 2014年4月ニューヨークの国連本部 撮影 石丸次郎

北朝鮮人権調査委員会の報告会 2014年4月ニューヨークの国連本部 撮影 石丸次郎

◇「管理所」は超法規で闇の収容施設

国連に設置された北朝鮮人権調査委員会の報告書が2月に公表され、世界的に北朝鮮の人権状況に注目が集まっている。報告書は全371ページ。多くの 調査員が脱北者や拉致被害者家族、アムネスティなとの人権団体から聞き取り調査を実施し、韓日英米などで公聴会を開いてまとめられた。筆者も、昨夏東京で の公聴会に呼ばれ、北朝鮮内部で撮影された映像を見せて見解を陳述した。

北朝鮮外務省はこの人権報告書に対し、
「朝鮮人民の真の人権享受の実情を無視し、敵対勢力と朝鮮で罪を犯し逃亡した『脱北者』や逃亡者らが生計を維持するためにねつ造した資料を集めて組み立てたもので一考の価値もない」
と、真っ向から反発・否定した(2月21日の声明)。北朝鮮政府は一貫して「我国に人権問題など存在しない」という立場を取り続けている。

しかし、今や韓国はじめ世界中には、脱北者という生き証人が約2万7000人もいる。北朝鮮政権による広範で組織的な人権蹂躙に疑う余地はない。特に深刻さと特異さが際立ち、世界中が憂慮しているのは政治犯収容所の問題だ。

◇北朝鮮に存在する二種類の政治犯

北朝鮮には大きく分けて二種類の政治犯が存在することをご存知だろうか?「法定政治犯」と超法規の「掟」によって裁かれた政治犯である。

北朝鮮刑法には「反国家及び反民族犯罪」の章があり、国家転覆陰謀、テロ、反国家宣伝煽動、祖国反逆、民族反逆、間諜などの項目で罪刑を定めてい る。そのひとつ、刑法61条では「反国家的目的で宣伝、煽動行為をした者は、5年以下の労働教化刑に処する。情状が特に重い場合は、無期労働教化刑又は死 刑及び財産没収刑に処する」とある。

例えば、政府の政策に反対する演説をしたり、ビラを撒いたり、落書きをしたりという行為は、今北朝鮮国内でやれば間違いなく逮捕され処罰されるだろ うが、これは刑法に基づく「政治犯」になりえると言える。(いずれも04年改訂刑法の条文。12年にも刑法改訂があったが条文未公開。61条は現在の60 条だと思われる)。

刑法によって裁かれた人は教化所(刑務所に当たる)に送られる。管轄するのは人民保安省(警察)だ。政治的な信念や考えから起こした行動をいくらで も「反国家及び反民族犯罪」の名のもとに処罰できる法的根拠があるわけだ。これは他の国にもいくらでも見られるもので、「後進的政治処罰」システムとでも 言えるだろう。

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