国営企業がまともな給与と配給を出せなくなると、北朝鮮の人々は独自に経済活動を活発化させ、闇の賃仕事が全国で続々誕生した。特に衣類や漁網の加工製造では、「親方」が縫子を募集する小規模企業まで出現、女子中学生が教員の20倍もの収入を上げる事例も報告されている。
<労働市場と自由労働者>記事一覧

海近くの親方の家で漁網を編む近隣の女性たち。

海近くの親方の家で漁網を編む近隣の女性たち。

2 家内手工業と技術労働

◇「親方ので出現
製造の仕事で自由労働が盛んに行われているのは縫製だ。今の北朝鮮は布地をほとんど生産できなくなっており、衣類は中国から既製品、古着を輸入するか、輸入された布地を縫製加工する。

衣類の商売人が、人を手配する「親方」に発注し、「親方」が「縫い子」を集めて布地と糸を与え、一着あたりの加工賃で縫製させる。「縫い子」は多くの場合女性で、自宅で作業をするが、働けば働くほど収入が増えるので、家族総出で作業をするケースも珍しくないという。

部屋に入りきれず庭でも作業をする。

部屋に入りきれず庭でも作業をする。

 

清津市の場合、規模を拡大して縫製工場のように運営して処罰されることが度々あったので、現在では目立たない様に「縫い子」に家で作業させるのが普通だという。

北朝鮮内部の取材パートナーが、漁村の私的雇用の様子を06年夏にビデオで取材していたので紹介したい。手配師の「親方」は、漁業協同組合や、軍や警察や党機関が外貨稼ぎのために運営する漁業会社が所有している漁船に、消耗品の漁網を卸す商売人だ。

この「親方」の家には、近所の主婦や中学生など15人ほどが集められ、市場で仕入れてきた中国製のナイロンの糸を、手作業で熱心に魚網に編みあげていく。各自の家で作業させていないのは、作業にスペースが必要だからだろうか。
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