トルコの海岸に打ち上げられた三歳児アイランちゃんの故郷のシリア北東部のコバニ。戦闘と空爆で廃墟となり、人が住む空間はない。2014年12月、玉本英子撮影

トルコの海岸に打ち上げられた三歳児アイランちゃんの故郷のシリア北東部のコバニ。戦闘と空爆で廃墟となり、人が住む空間はない。2014年12月、玉本英子撮影

 

欧州を目指す中東、アフリカからの難民が止まらない。
EU(欧州連合)は、9月に12万人の受け入れと約1340億円の資金拠出を決めたが、それでこの難民問題が解決するわけではないことは、誰もがわかって いる。欧州への難民流入は、2003年の米国ブッシュ政権によるイラク攻撃、シリア、リビアなどの強権国家の瓦解に端を発する中東大混乱という大河の、最 下流の出来事に過ぎないからだ。

シリアからは400万人が周辺国に流出し、国内避難民は350万人に及ぶ。どれほど酷い迫害、破壊があって人口の四割を超える人々が故郷を捨てるに至ったのか。混乱の「源流」にまで遡って調べないとわからない。それはジャーナリズムの仕事である。

後藤健二さんがシリアで「イスラム国」に殺害されて8か月が過ぎた。彼は「源流」の有り様を記録しようとした記者の一人であった。イラク戦争以降今日まで、6人の日本人ジャーナリストが危険地域の取材中に命を落とした。

5人は銃撃を受けて死亡したが、後藤さんのケースは、取材中のジャーナリストが人質となって、日本政府に2億ドルという法外な身代金要求と、中東政 策変更を突き付けられるという前代未聞の展開となった。その上、後藤さんは、身の毛のよだつような殺され方をした。そのため安倍政権は、危険地域を取材す るジャーナリストたちを負担に感じ、「国益に反する者」として敵視するようになった、と私は考えている。
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