11月23日、イラン国会は麻薬犯罪の量刑(死刑)を軽減する法案を可決した。ニュースを伝えるISNA通信サイト
11月23日、イラン国会は麻薬犯罪の量刑(死刑)を軽減する法案を可決した。ニュースを伝えるISNA通信サイト

 

イラン国会は23日、麻薬犯罪者に対する死刑の代替刑導入に関する法案を賛成多数で可決した。これにより、同国の麻薬犯罪者の死刑執行の80パーセントがなくなると予想される。(アジアプレス/大村一朗)

この麻薬取締法の改訂では、一部の事例を除き、これまで死刑または無期懲役とされた事例を禁固25年から最大30年に減刑する。今後も死刑が維持される事例は以下の4つに限定される。

1.犯罪グループの首謀者または構成員の一人が逮捕時に銃火器で武装していた場合、または銃火器や刃物を運んでいた場合
2.逮捕者が組織的な麻薬犯罪組織の首謀者である場合
3.麻薬犯罪で死刑または10年以上の禁固刑の判決を受けた前科がある者の再犯
4.麻薬取締法第8条の薬物を大量に製造または密輸した場合(重量は未決定)

改訂案を今期国会に提出したイラン国会司法・法律委員会のハサン・ノウルーズィー議員は、「現在イランではおよそ5000人の死刑囚が刑の執行の待っており、その90パーセントが麻薬密輸犯罪者である。しかし、そのほとんどは初めて運び屋に手を染めた者であり、首謀者は国境の向こうで指揮を取っている」とし、「初めて麻薬を所持あるいは運搬した者、あるいは利用されたりだまされたりして運び手となった者たちを処刑の対象にしてはならない」と述べる。

◆イランの麻薬事情

イランは麻薬の生産国アフガニスタンに隣接し、ヨーロッパや中東への麻薬移送ルートの途上にあることから、麻薬の密輸と常習者の増加に長年苦しめられてきた。麻薬対策本部の発表では、イランの年間麻薬密輸収入は30億ドル(2013年)、その前年の薬物押収量は500トンに及び、この30年間で30万人近い密輸業者と売人が逮捕されている。国内の常習者は200万人とも300万人とも言われ、現在は刑務所内への薬物の持ち込みと蔓延が大きな問題となっており、最新機器の導入で対処するとのニュースがこの11月にも報じられたばかりだ。

このため、麻薬犯罪に対しては厳罰主義を取り、これまでの麻薬取締法では、アヘンなら5キロ以上、マリファナ、コカイン、ヘロインなどは30グラム以上の所持で死刑が確定した。

その結果、イランの年間処刑者数はここ数年、中国に次いで世界第2位であり、アムネスティーインターナショナルの報告では、2015年度のイランの死刑執行数は977件以上とされている。人口密度で換算すれば、中国を抜き世界1位の「死刑大国」となり、毎年のように国連人権委員会から非難決議を採択されてきた。

イラン国内でも、死刑執行数と薬物犯罪の逮捕者が比例して増加していることから、麻薬取締本部をはじめ警察、司法関係者の間からも、「麻薬犯罪では死刑は抑止力になっていない」「まず麻薬問題の根源である失業や経済的・文化的貧困をなくさなければならない」とする、現行法への疑問の声があがっていた。(次の回へ

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