「油がなくて軍の輸送には今でも木炭車が欠かせない」(20日に通話した元軍人)。

人民軍に栄養失調が蔓延しているは20余年前からのことだ。人民軍の兵員は100万人超、人口の5%に及ぶ。この大人数を食べさせる食糧を、金正恩政権は財政難で確保できないでいる。また支給された食糧も、軍の幹部たちが横領して売り飛ばしてしまう不正行為が横行していて、末端の兵士にまで行き届かないのだ。

「本当に戦争する軍隊は別にあるんだよ」

兵士たちの間で、こんな「自虐ギャグ」が交わされている。

金正恩政権は、「軍事強国」というイメージ作りのために、ミサイル発射場面や兵士の勇ましい行進の映像を巧みに使ってきた。核とミサイルの脅威はもちろん深刻だが、人民軍の実像については冷静に見ていく必要がある。

※1968年1月、米国の偵察艦「プエブロ号」が、北朝鮮の領海を犯したとして拿捕され乗員1名死亡82名が拘束された。米国は空母を差し向け乗員の解放を求めたが金日成政権は拒否、緊張が高まった。結局、米側がスパイ行為を謝罪して乗員が解放された。
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1976年8月、非武装地帯の板門店の共同警備区域で、ポプラ並木の剪定を行っていた韓米の兵士が、無断剪定の中止を求める北朝鮮兵に襲撃され米兵2人が死亡した。 米軍は空母を近海に展開して圧力をかけながらポプラ並木の伐採を強行。金日成主席が遺憾を表明することで衝突は回避された。

1994年5-6月 米クリントン政権は、北朝鮮の寧辺(ニョンビョン)にある核施設を限定爆撃する計画を立案。金泳三(キム・ヨンサム)大統領が空爆反対を唱え、また訪朝したカーター元米大統領に金日成主席が核開発の凍結を表明して、空爆は回避されたとされる。拉致被害者の蓮池薫さんは著書「拉致と決断」の中で、当時の平壌では、灯火官制がしかれるなど、戦争勃発の恐怖と緊張の中で暮らしていたと記している。(石丸次郎)
※朝鮮人民軍が飢える構造と実態について長文の論考1~8を書いています。ご参考まで

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