◆地下活動家に聞く IS支配地域住民は日本をどう見ている?

武装組織イスラム国(IS)は支配地域で公開処刑を繰り返してきた。反対勢力や、独自解釈したイスラム法に背いた者が対象だ。敵対分子、スパイ、強盗、同性愛者などとみなされた人を、町の広場で銃殺や斬首、投石によってあいついで処刑し、映像をネットで世界に公開してきた。IS が「首都」と称するラッカで、反ISの情報発信を続けてきたメディアグループ「ラッカは静かに虐殺される」の地下活動家、アルラッカウィ氏は、公開処刑の現場に足を運び、その実態を目撃した。2015年に起きた日本人人 質事件では、ISは日本を「敵」とみなすと宣言。ラッカ市民はこのことを知っているのか、またそうならば、どう受けとめているのか。2015年2月のラッカ直接電話インタビュー記事を特選アーカイブとして掲載する。3回目。【聞き手:玉本英子】(全5回)

(※2015年初出のアーカイブ記事。情報等は当時のまま)

イラク・ニナワ県での公開処刑。罪状が読み上げられたあと、刑が執行される。男性2人が磔になっている。このあと、ピストルで頭を撃ち抜かれた。強盗罪とされるが、手足切断ではなく、磔の上の銃殺であり、おそらく強盗殺人など相当の重罪だと見られる。(IS映像)

イラク・ニナワ県での公開処刑。罪状が読み上げられたあと、刑が執行される。男性2人が磔になっている。このあと、ピストルで頭を撃ち抜かれた。強盗罪とされるが、手足切断ではなく、磔の上の銃殺であり、おそらく強盗殺人など相当の重罪だと見られる。(IS映像)

<ラッカで2か月間で30人以上が処刑か>

◆ISは処刑映像を頻繁に公開しています。実際に現場に行ったことはありますか? 週に一度、金曜日にやっていると聞きますが。

アルラッカウィ氏: 処刑を見たことはもちろんあります。ラッカでは金曜日と決まっているわけではなく、頻繁に行われています。ラッカ市内ではこの2か月だけで30人以上が処刑されました。

◆どういう理由で処刑されているのですか? 誰が処刑を決めるのですか?

アルラッカウィ氏:ラッカの裁判所が処刑を決めます。まず、イスラム国に反対する活動家は死刑です。市内の写真やビデオを撮っていようものなら殺されます。イスラム国にとって否定的なものを外部に伝えるということは、彼らにとってダメージをもた らすことになるからです。もうひとつはイスラム国と戦っている相手です。自由シリア軍、ヌスラ戦線、アハラル・シャムなど、どんな組織であろうと、容赦な く処刑されます。あとは、ドラッグ(薬物)を取引したり、密輸したりすれば、これも処刑の対象となります。同性愛の場合も処刑ですが、その場合は高いビル の上から突き落として殺します。落としても、息があるようなら投石で殺します。既婚の女性、男性が姦淫をすれば、投石での処刑が行われています。

イスラム国支配地域のアレッポ県マンブジの裁判所。アサド政権時代の裁判所の建物は、黒く塗りかえられ、「イスラム裁判所」と改名されて、行政機構に編入されている。裁判所では、反対勢力弾圧だけでなく、市民の日常の係争案件も扱われる。(IS映像)

イスラム国支配地域のアレッポ県マンブジにあった裁判所。アサド政権時代の裁判所の建物は、黒く塗りかえられ、「イスラム裁判所」と改名されて、行政機構に編入されている。裁判所では、反対勢力弾圧だけでなく、市民の日常の係争案件も扱われる。(IS映像)

ラッカ以外の場所でもイスラム国が独自解釈した「イスラム法」に基づく処罰が行われている。窃盗罪は手足の切断刑。見せしめによる恐怖統治と、犯罪抑止効果などから公開で行われることが多いという。一部の厳格なイスラム諸国ではこうした刑が行われる場合もあり、IS独特の処罰方法というわけではない。イスラム国広報部門は、各都市での手足切断刑の写真をいくつか公開しているが、切断後、病院で処置を受ける様子もあわせて報告している。(IS映像)

ラッカ以外の場所でもイスラム国が独自解釈した「イスラム法」に基づく処罰が行われている。窃盗罪は手足の切断刑。見せしめによる恐怖統治と、犯罪抑止効果などから公開で行われることが多いという。一部の厳格なイスラム諸国ではこうした刑が行われる場合もあり、IS独特の処罰方法というわけではない。イスラム国広報部門は、各都市での手足切断刑の写真をいくつか公開しているが、切断後、病院で処置を受ける様子もあわせて報告している。(IS映像)

同性愛者は死刑。高い建物から突き落とされる。地面にはすでに別の男性が倒れているのがわかる。ラッカウィ氏によると、落とされてもまだ息がある場合は、石を投げつけて殺すという。イラク・ニナワ県(IS映像)

同性愛者は死刑。高い建物から突き落とされる。地面にはすでに別の男性が倒れているのがわかる。ラッカウィ氏によると、落とされてもまだ息がある場合は、石を投げつけて殺すという。イラク・ニナワ県(IS映像)

◆2014年12月、シリア北部のコバニで取材しました。そこではクルド人民防衛隊(YPG)はIS陣地から大きなコカインの袋を押収していました。戦闘での恐怖や負傷したときの痛みから逃れるためにIS戦闘員が使っているということでした。

アルラッカウィ氏:なぜISがそのようなものを所持していたのか分かりません。ただ、ラッカ市内では、そのような薬物を所持していた場合、死刑です。ラッカにはドラッグが裏で存在し、それを密売しているような例はありました。
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