水曜コンサートでは、先生方も総出で観客に対応する。写真中央でCDやパンフレットを販売する女性は、寮母さん。アジア系の顔立ちをした方だ(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

ドラケンスバーグ少年合唱団は、世界少年合唱団フェスティバルで最優秀賞に選ばれたほどの実力を持つ合唱団だ。世界に認められるほどの彼らの歌声が、この合唱団が持つ特徴、特色は、どこにあるのだろうか。

同合唱団の第一指揮者兼アートディレクターのベルナルドに聞いた。

「4つのポイントがあります。ひとつめは、4つのパートから成る混声合唱団であることです。少年合唱団の場合、声変わり前か後かで声質を揃えるケースもありますが、ここには、声変わり前の少年から声変わり後までの子どもたちがいます。ソプラノからバスまで、幅広い声質を伴っていることが、まず何よりの特徴です。」

「また、私たちの声は“アフリカ”に基づいたものです。踊ったり、土着の音楽をアレンジした歌を歌う際に、生まれながらに持ったものが与える影響は少なくありません。体が、(教えなくとも最初から)知っています。」

「寄宿舎での生活も、合唱に大きく寄与しています。こう声を出したいのにできない、といった困難が生じても、ともに暮らしているために、子どもたちの間で助け合い、すぐに解決してしまいます。私は今も日々、彼らの助けあいの力の大きさに驚かされています。」

「そして、本校の運営が、完全に独立したものであることです。私たちは、出資者の意向を考えることなく、少年の育成に専念することができます。」

私は、国政レベルから日々の生活に至るまで、自身が訪ねてきたアフリカすべての地域において、助けあいや連帯を強く感じさせられてきた。また、南アでもトーゴでもマラウイでもなく、「アフリカ」としか形容できない何かも、現地を訪ね続けていると、常に感じる。ベルナルドはスラスラと話していたが、彼が挙げたポイントには重みがある。その後何度も、私は心の中で4つのポイントを反芻した。

指揮者ベルナルド(左)と、最近アメリカより赴任した新しい指揮者のケニー(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

合唱団の少年。(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

私のドラケンスバーグ滞在の最終日は、合唱団が毎週開催する水曜コンサートが開かれる日でもあった。もちろん私も、会場に足を運んだ。

この日も、会場はほぼ満席だ。水曜コンサートはいつも、ベルナルドの軽妙なトークから始まる。観客をドッと笑わせながら会場を温めたのち、これもまたいつも、西欧や南米など、遠方からの観客の来場を紹介し、感謝の意を表している。私のことも、「この合唱団のために、わざわざ日本からここまで来てくれました。日本ってどこにあるか知っていますか? アジアのずーっと向こうですよ。合唱団のためにここまで来たなんて、ちょっと信じられない」と、冗談交じりに紹介をしてくれた。

水曜コンサート終了後、ホールの外でアンコールを数曲披露してくれた(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

コンサートは、文句なしに素晴らしいものだった。クラシックからアフリカ民謡まで、楽曲のジャンルは多岐に渡ったものだ。伴奏はピアノだけでなく、ドラムセットやエレキギターからも奏でられる。また、合唱だけでなく、ソリストによるソロパートや踊りも交えられており、多くの人が楽しむことができるように磨かれ、洗練されたコンサートだった。南アフリカの、アフリカ各地の風景が自然と想起させられる、重みを伴った、清らかな歌声だった。

ドラケンスバーグ地方ウィンタートン周辺の風景(ウィンタートン・南アフリカ 2017年/Winterton, South Africa 2017 撮影:岩崎有一)

合唱団の歌声の余韻を引いたまま、水曜コンサートの翌日に私は、もうひとつのコンサートを目指してケープタウンに向かった。

(つづく)

<岩崎有一/ジャーナリスト>
アフリカ地域に暮らす人々のなにげない日常と声と、その社会背景を伝えたく、現地に足を運び続けている。1995年以来、アフリカ全地域にわたる26カ国を訪ねた。近年の取材テーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」など。Keynotersにて連続公開講座「新アフリカ概論」を毎月開催中。2005年より武蔵大学メディア社会学科非常勤講師。
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