金正恩氏肝いりで作られた馬息嶺スキー場。労働新聞より引用。

 

「自分の息子・娘が選手や応援団で韓国に行くならともかく、一般の人々は五輪に関心ないですね。与正が南に行ったことも大きく報道されましたが、(周囲では)ふ~んというくらいの反応」

と、北部地域で小ビジネスを営む女性は言う。

南北単一チームや北朝鮮選手の出場が進む中、他に3人の女性に尋ねたが、答えは似たり寄ったりの拍子抜け。なぜだろうか? まず、北朝鮮の住民にとって、冬のスポーツがまったく縁遠いということがある。

北朝鮮の一般の庶民にとって、スキーとは映像や本の中で見るものでしかない。今も大半の庶民は生活が苦しく、スキーを楽しむことなど想像もできないのだ。 本格的なスキー場は2012年末に開場した馬息嶺(マシンリョン)スキー場だけだが、利用するのは特権階層と選抜されたスポーツエリートと軍事訓練の兵士くらいのものだという。

寒い北朝鮮では、スケートやそり遊びをする人は決して少なくない。だが競技となると話は別だ。北朝鮮で長く冬季スポーツの指導に関わり、2011年に脱北した男性にインタビューすると、次のように嘆いた。

「リンクはもっぱら屋外に水をまいて凍らせたもの。屋内リンクは平壌にある『氷上館』と呼ばれる競技場と、それに併設された練習リンクがあるだけです。1964年と92年に女子選手がスピードスケートでメダルを取ったこともありますが、90年代後半の経済破綻でスケート競技は壊滅的な打撃を受け、2000年代初めにフィギュアスケート、スピードスケート、アイスホッケーのチームの多くが解体されてしまい、今、ようやく復旧の途上にあるんです」

この元スポーツ指導者が指摘するのは、冬季スポーツは金がかかるため、北朝鮮の経済状況では限界があるということだ。「夏場は屋内リンクにまったく氷が張れません。アイスホッケーの練習では、高価なスティックを折らないよう、シュートは注意深くそろりと打たなければならないんです」。

付言すると、北朝鮮でもサッカーを筆頭にスポーツは盛んである。女子サッカーは国内戦もあり国際大会で好成績を収めている。
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