(参考写真)市場で食事をする人の食べ残しを容器に集めていた女児。2012年11月両江道の恵山市場にて撮影「ミンドゥルレ」(アジアプレス)

◆金正恩三代世襲について

――金一家が代を継いで権力を握る世襲政治についてはどう思いますか? 

 世界中でそんなことをしている国が朝鮮の他にありますか?

――無いですね。

 私たち朝鮮の人間はこう言います。「この世のものはすべて搾り取られる」と。(国を閉じて)何も見られないように、聞くこともできないようにしているから(世襲ができる)。朝鮮でもいい人を大統領に選べるようにすべきです。経済をよく知っている人を。それなのに、同じ家の人間がやって、またやって…。

――「白頭の血統」が朝鮮を統治しなければならないと主張していますね。

 「白頭の血統」なんて、そんな話を信じる人は、もういないですよ。金正日が白頭山で生まれたのではないという事実を知らない朝鮮人はいないはずですよ。

――白頭山で生まれていないと?

 もちろんです。皆知っています。

――リ・ソルジュ(李雪主、正恩氏の妻)についてはどう思いますか?

 「女史様」なんて呼んでいるが、あんな小娘を連れ回してみっともない。だからここではコネを掴むのが大事なんです。親戚まで平壌に行ってるでしょ。元は皆同じ人(大衆)です。何が「女史様」ですか。

――リ・ソルジュが金正恩氏と一緒に行動するのは気分が良くないですか?

 どっかで歌をちゃらちゃら歌っていたのが目に留って、それが「女史様」だなんて。ここではリ・ソルジュのことをよく思っていないんです。

◆非核化には否定的

――金正恩氏は非核化交渉の話し合いに出るそうです。

 核を放棄するですって?ここでは、核は我われに絶対必要なもの、無くてはならない最も強力な武器だと言いづづけてきたので、子どもでもそう言うほどです。それをなくすなんてウソですよ。(金正恩は)どうして核をあきらめるんですか?絶対放棄しませんよ。

――他の人たちもそう思うでしょうか?

 皆そう思うはずです。核は絶対諦めないと。

――北朝鮮では、核についてどのように宣伝教養していますか?

 我われが米帝国主義に飲み込まれないために、闘っても堂々と勝てる兵器が核だと。

――国を守るためと言って莫大な資金を投入して核を作りました。正しいと思いますか?

 私も朝鮮で長く住んできたせいか、こう考える時があります。核なんて一つあればいいのではないか。引き続き開発して新たに作っているが、もう作らなくていいのではないかと。

――金正恩は、条件によっては核を捨てる意思があると言いました。それで米国と会おうと。

 庶民としては放棄したらいいと思いますよ。米国からも何か約束がありますか?核を放棄すれば封鎖(経済制裁が)が緩まるなら、我われ庶民たちにとっては良いことですよ。けれど、金正恩は絶対に諦めないと思う。命のようなものですから。そんなことは私たちでも分かるのに、あなたたち外国の人には分からないのかな?

――今、とても厳しい経済制裁を受けていますよね。これを解除してほしいから金正恩が譲歩したとは考えられませんか?

 言ってみれば、(金正恩は)のらりくらりと振舞うのでしょう。放棄すると言って時間を稼ごうという意図かもしれません。あの人も間抜けではないから。
(了)

※アジアプレスでは中国の携帯電話を北朝鮮に搬入して連絡を取っている。

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