高級中学1年用の「社会主義道徳」。教科書の一節に「ブルジョア思想文化は我われの階級意識を麻痺させる」というページがある。CDや本、フイルムを火にくべるイラストが使われている。(アジアプレス)

(3)遵法教養

法律に関する教育は、以前の「共産主義道徳」の教科書には少なかった項目で、二〇〇〇年初頭に「社会主義道徳」に名称を変えて以降、憲法と刑法の教育項目が大幅に強化された。高級中学の教科書の名称は、「社会主義道徳と法」というものになっているが、これは長期にわたる経済的な困窮を経て、弱まった住民の遵法意識の回復を狙った当局の措置と見ることができる。

遵法教養とはいうものの、随所に金氏父子の偶像崇拝を制度的な規範と結び付けて説明している。例を挙げると、高級中学一年生のこの教科書の「社会主義憲法」を学習する章では、社会主義憲法を「金日成-金正日憲法」と紹介しながら、「偉大な太陽の尊名で呼ばれる首領永生の憲法を持った太陽民族としての大きな矜持と自負心を持ち、我が国、我が祖国の富強繁栄のため自身のすべてを捧げなければならない」と強調している。

また、社会主義憲法の優越性を説明する部分においては、平壌に立ち並ぶ現代的な建築物を、金正恩の「人民への愛」によるものと説明しながら、「南朝鮮では多くの住民が家もないまま、死ねなくて生きている」と記述している。
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