シリア民主軍(SDF)によるラッカ攻略戦を前に町の死守を訴えたIS。宣伝映像では軍事キャンプでの戦闘員養成の映像を公開した。 (2017年7月・IS映像・ラッカ)

ラッカからISは敗走し、クルド勢力主導の行政統治機構に移行した。かつてシリアを取材した際、私は自由シリア軍の19歳の青年に会った。ラッカ出身のアブゼルは出撃を前に顔をこわばらせて、こう言った。

「中学校の友だちが何人もISに入った。多くが戦乱で仕事を失った家族を支えるためだった。でも、僕は彼らに銃を向けなければならない。これは戦争だから」

いまシリアで起きている内戦。殺し合う相手は同級生であり、隣人でもあった。この悲しい現実にも私は目を向けたい。

自由シリア軍の青年アブゼル(19歳)。「戦乱で仕事を失った家族を支えるため、友だちが何人もISに入った。でも僕は彼らに銃を向けなければならない、戦争だから」 。(2014年12月・撮影:玉本英子)

ISは少年戦闘員を訓練し、戦闘に動員。IS宣伝映像に登場したアレッポ出身とみられる少年は、ジハードに身を投じる「意義」を語る

シリア民主軍(SDF)が有志連合の空爆支援を受けながら攻略戦を展開、2017年10月にラッカに突入し、解放を宣言した。写真はラッカで最後の抵抗を続けるIS戦闘員。(2017年8月・IS映像・ラッカ)

(※本稿は毎日新聞大阪版の連載「漆黒を照らす」2018年5月29日付記事に加筆修正したものです)

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