◆モロッコ代表とつかみ合いになった会議も

TICADの存立を揺るがす「問題」として西サハラの課題が浮上したのは、2016年のことだ。ナイロビで開催されたTICADVIの準備のために、本会議の直前に開かれた高級実務者会合に、西サハラ住民を代表するサハラ・アラブ民主共和国(RASD)が出席。モロッコは猛反発した。結局、RASDと国交を持つケニアの調整により、本会議にはRASDの席は設けられず、TICAD6は実質上、西サハラを排除した形で閉幕した。

注意すべきことだが、RASDの高級実務者会合出席の動きは、決して、RASDが強硬手段に出ることで生じたわけではない。その前年なる2015年6月に開かれたAU(アフリカ連合)執行委員会27回通常会合で、以下の決議が採択されている。

(執行委員会は)アフリカ連合を当事者として含むパートナーシップの枠組みの中で、すべての加盟国が差別なく、組織されるすべての会合、活動、行事に参加する権利を再確認する。

この決議をもって、TICADの共催者であるAUの加盟国は、RASDを含めすべて等しく参加する権利が保障されることとなり、RASDは2016年の高級実務者会合に、当然のこととして出席したわけだ。

また、アフリカ諸国の中で唯一、モロッコだけはAUの非加盟国だったが、ついに2017年に加盟。モロッコもAUのルールの中でTICADに参加することとなった。

TICAD本会議に出席した、サハラ・アラブ民主共和国の代表団。青いダラーアをまとったブラヒム・ガリ大統領、後列右からラミン・バーリAU大使、ウルド・サーレク外相(8月29日撮影:岩崎有一)

このままRASDも参加するかたちでTICADが進行すればめでたしではあるが、衝突が起こった。2017年8月にモザンビークで開催されたTICAD閣僚会議に出席したRASDの入場を、モロッコは力づくで阻止。国際会議の場で、モザンビーク当局が介入するほどの、つかみあいの乱闘が起こった。その後2018年に東京で開催されたTICAD閣僚会議では、RASDの外相とAU代表部大使が事実上参加したが、その代わり、RASDを含むアフリカ各国はすべて、国名や国旗を表示せず、「アフリカ連合メンバー」として参加するという、明らかに異常な国際会議となった。果たして、TICAD7を10か月後に適切に開催することができるのか、危ぶむ声も聞こえるようになった。

AUとEU間で開かれるAU-EUサミットでは、AUとEUの関係において会議が進められる。アフリカの各国の参加は、AUの責任で行われ、これについてEUは口を出さず、また責任も生じない。TICADでもこれに準じた方式が取れないか、という模索が始まった。この方針転換が功を奏し、今回のTICAD7開催にいたっている。この結果、RASD国家元首の初来日・初参加が実現した。