◆再び銃を取るか、非暴力の抵抗を続けるか

西サハラの砂漠を進んだ先の、アルジェリア領内のチーンドゥーフ郊外には、モロッコによる空爆と攻撃を逃れたサハラーウィによる難民キャンプがある。

1991年にモロッコとの停戦合意後、西サハラの独立解放を求めるポリサリオ戦線はこの難民キャンプを拠点にしながら、徹底した非暴力闘争を続けてきた。しかし、サハラーウィの中には、非暴力闘争に限界を感じる声も聞こえ始めている。砂漠の中の砂漠と呼ばれるこの地で、じっと耐え続けることは容易ではない。

サハラーウィ難民キャンプ(アルジェリア・チーンドゥーフ/Tindouf, Algeria撮影:岩崎有一2019年)

『銃か、落書きか』は、西サハラのモロッコ占領地の実態を伝える希少なドキュメンタリーだ。占領地におけるサハラーウィ活動家やジャーナリストの声に加え、難民キャンプの様子やこれまでの経緯も簡潔にまとめられている。日本ではなかなか伝えられることのない西サハラ問題を知るための、貴重な手がかりとなる内容が凝縮されたものだ。

『銃か、落書きか』は、東京(渋谷ユーロスペース)で3月14日、17日、19日に、名古屋(シネマテーク)で4月29日、神戸(元町映画館)では5月2日から8日の間に上映される。

また、上映後にはトークも準備されている。ジョルディの映像の背景に加え、モロッコ占領地と難民キャンプ、及びサハラーウィが統治する解放区の実情を、写真を交えながらの解説となる予定だ。

岩崎有一
ジャーナリスト。1995年以来、アフリカ28カ国を取材。アフリカの人々の日常と声を、社会・政治的背景とともに伝えている。近年のテーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」「西サハラ問題」など。アジアプレス所属。武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。

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