◆イドリブ記者:「ウイルスよりも空爆が差し迫った恐怖」

シリア北西部イドリブでは、反体制武装諸派とアサド政権・ロシア軍との激しい戦闘が続いてきた。イドリブの市民記者ムハンマド・アル・アスマール氏(35歳)は、「ウイルス感染も脅威だが、アサド政権の空爆のほうが住民には差し迫った恐怖」と話す。

シリア北西部イドリブ市内。現在、外出制限は出ていないものの、新型コロナウイルス対策で手洗いや消毒奨励の啓発活動は行われている。(2020年3月24日17時半・撮影:アル・アスマール記者)

アル・アスマール記者:
「これまでのところイドリブでは新型コロナウイルスの感染陽性者は出ていないと聞いています。市民の多くは、新型コロナウイルスの脅威についてよく分かっておらず、私たち市民メディアはいくつかの啓発キャンペーンを通じて感染対策を呼びかけました。住民は予防や衛生対策を講じ始めました。しかしまだ人びとを通りで見かけます。マスクの入手は難しく、消毒液などを買うお金もありません。

これまでの砲撃などから逃れ、北部のトルコ国境近くでテント暮らしをしている百万に近い人たちは怖くて戻ることができません。支援もまったく足りず、環境も劣悪で厳しい状況にあります。

アル・アスマール氏の夕食。サラダとピーナッツ入りのピラフ。肉は高価で食べる機会はほとんどなくなったという。(3月24日17時半・撮影:アル・アスマール記者)

私はイドリブ市内のアパートに妻と幼い子供たちと暮らしています。生活は困窮しています。給水車が来ても足りず、水は井戸から汲みます。電気は発電機やソーラーパネルなどを使いますが停電ばかりです。主食のパンは400シリアポンド(約30円)。以前の倍の金額です。肉は1キロ約800円。食べることなどできません。

戦闘の激しいイドリブ南部地域では昨年9月から学校は閉鎖されていますが、イドリブ市内や北部の学校では部分的に授業はありました。しかし新型コロナウイルス対策として休みになりました。今のところ外出制限措置は出ていません。

イドリブ在住で市民記者としてアラブメディアに現地の状況を伝えてきたアル・アスマール氏(35歳)。(写真:本人提供)

イドリブ市内。シャム解放機構(HTS・旧ヌスラ戦線)が支配し、アサド政権と激しい戦闘を続けてきた。(3月24日17時半・撮影:アル・アスマール記者)

現在、イドリブ市はシャム解放機構(HTS・旧ヌスラ戦線)の影響力が大きいです。外国人の戦闘員も見かけますが、私の地区では住民に横暴を働いたりしている話は聞きません。他の地域のような外出制限の話が出たとしても、市民は外に出るでしょう。働かないと生きていけませんから。皆、生きるか死ぬかのぎりぎりのところにいるのです。

住民のひとりはこう言いました。『コロナで死ぬ子どもより、アサドが殺した子どもの方が多いじゃないか』。

アサド政権軍が、イドリブ南西部のジスル・アッ・シュグルに向けて新たな攻撃を始めるのではないかという情報が入っています。ウイルス感染も脅威ですが、それよりはるかに多くの住民の命がこの内戦で失われてきました。アサド政権の空爆のほうが住民には差し迫った恐怖なのです。

各国で新型コロナ問題に関心が注がれるタイミングを利用して、アサド政権が非道な攻撃をするかもしれません。私たちは、新型コロナに加え、いつ空爆や砲撃の犠牲になるかわからない不安な毎日を送っているのです。この現実も知ってください」。

シリアの民間団体による新型コロナウイルス対策の啓発のための画像。鼻をかむ際の注意などが記されている。(シリア・レスポンス・コーディネーション・グループより)