ISは、シリア・イラクで支配地域を広げた2014年頃から、これら公開刑を町や村で繰り返した。広大な地域を支配したISは「国家」を名乗り、イスラム法による統治を宣言。捕虜や外国人人質をあいついで斬首し、のちには後藤健二さんら日本人も犠牲となった。残酷な処刑や公開刑の生々しい写真や動画は、次々とネットで発信された。IS志願の外国人が続々とシリア入りし、欧米各国でもテロ事件が頻発する。

ラッカ中心部の環状交差点ナイム広場はISによる公開処刑場所のひとつだった。シリア政府軍ほか敵対組織が処刑された。鉄柵には生首が。(RMC写真より)※一部ぼかし

ラッカのナイム広場を取材する筆者。この鉄柵に斬首された生首がいくつも並べられた。(2018年10月・ラッカ・坂本卓撮影)

米軍は、シリアでISと戦うクルド主導勢力を支援。2017年秋、激戦の末、ISはラッカから敗走した。IS支配下で何が起きていたのか。私は恐怖支配が終わったラッカに入り、公開刑に処せられた被害者を捜した。

住民の多くが当時の話をするのを怖がった。ISがまだ潜伏し、襲撃や暗殺が絶えなかったからだ。ようやく見つかった証言者の一人は、市内西部で理髪店を営む20代の男性。「イスラム男性の髭を剃った罪」で80回のムチ打ち刑を受けた。「ムチの痛さよりも、人前での屈辱がつらかった」

IS敗退後、地元行政当局がナイム広場を改修、噴水やベンチを設置。(2019年10月・ラッカ・玉本英子撮影)

改修後、ISの悲劇を忘れぬよう鉄柵の一部がモニュメントとなっていた。(2019年10月・ラッカ・玉本英子撮影)

◆スパイ協力拒むと「窃盗」の罪を着せられ手首切断

窃盗罪は手足の切断、喫煙や飲酒などはムチ打ち、神への冒とくは死刑というように、イスラム法にはハッド刑と呼ばれる身体罰がある。イスラム諸国には、この宗教的法体系を取り入れている例があるが、運用の度合いは国によってさまざまだ。ISは、これらを極端に解釈し、厳格に適用した。一方で、実際には、こうした法律は、ときに恣意的にも使われた。

ISが独自解釈して規定した身体罰ハッド刑を解説したパンフ。(IS出版物より)※一部ぼかし

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