◆水道管損傷で断水

イスラエルの爆撃で壊された水道管の復旧作業をする人たち(2021年5月ガザ市・住民撮影)

 

アマルさんは続ける。
「ガザの経済活動はストップし、お店はどこも閉まっています。危険にもかかわらず、ロバの荷車の上に野菜を積んだ物売りの人が来ますが、他のものは何も買えません。今は家に保存していたオリーブなどを食べています。

ライフラインですが、電気がくるのは一日5時間くらいでしょうか。停電が多いので、ポンプが作動せず水が時々しか出ません。イスラエル軍はビルや住宅地だけでなく、道路も爆撃しています。水道管が破壊され、あちこちで断水が起こっているようです」

ガザ地区の人たちが、地区外へ出るにはイスラエルの許可がいる。写真は2008年、エジプト国境のゲートが開くのを待つ人たち(ラファ境界・古居みずえ撮影)

◆「これまでの戦争を超えるひどさ」

ガザ地区は2007年から、イスラエルによる封鎖が続いている。2006年のパレスチナ評議会選挙では、民主的な方法でイスラム組織ハマスが勝利した。しかしイスラエルはハマスを政治的なパートナーとは認めず、ハマスを選んだガザ地区の人たちに集団制裁として、イスラエルの許可なしでは地区外に出ることを禁じた。そのため、今回のような爆撃があっても、人びとは、隣国のエジプトやヨルダンなどへ避難することができないでいる。

唯一、ガザ地区と国境を接するエジプトは、5月18日にラファ検問所を開けて、エジプトの医療施設で治療を受けられるよう、重傷のパレスチナ人の通行を特別許可した。

またイスラエルは、これまで燃料や食料、医療器具、医療製品などが地区へ入ることも制限してきたため、ガザの医療環境はもともと脆弱だった。そんなところに新型コロナウイルスの感染が始まった。パレスチナ保健省によれば、これまでに累計8万人を超える感染者が出たという。そして今、病院には負傷者が溢れている。

アマルさんは最後に語った。
「最近は夜の爆撃がひどく、夜がくるのが怖くてたまりません。今回の爆撃は、これまでの戦争を超えるものです。どうぞ私たちの状況を知ってください」

【解説】パレスチナ問題とは

1948年にユダヤ人がイスラエル建国を宣言したことで、第一次中東戦争が起こり、パレスチナにそれまで住んでいた多くの人が難民となった。この時からパレスチナ問題が発生した。第三次中東戦争以来、イスラエルは東エルサレム、ガザ地区、ヨルダン川西岸地区を軍事占領。そのことでイスラエルはエルサレム全体をイスラエルの首都としている。しかしながら国際社会はそれを認めていない。一方で、パレスチナ人は将来、パレスチナ国家を建設した時に、東エルサレムを首都とするとしている。今回のイスラエルによるガザ攻撃の発端は、東エルサレムで数週間にわたって、イスラエルとパレスチナの人々の間で緊張が高まり、イスラム教徒とユダヤ教徒にとって聖地とされる場所で衝突が起き、パレスチナ側に多数の負傷者が出て、ガザのイスラム組織ハマスが反撃に出たことによる。

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