ジェスネルさん殺害事件を伝える新聞各紙。

◆オルテガを支えるベネズエラのオイルマネー 

脆弱だったオルテガ政権を資金面で支えてきたのが、年5億ドルに及んだベネズエラからの石油を介した巨額の援助だ。オルテガ政権はこの資金を元に、社会保障を充実させ権力基盤を整えようとした。だが、この資金は同時に腐敗の温床となった。

援助をオルテガ氏の影響下にある民間企業に担わせ、議会の監査を逃れた。これらの企業の子会社に親族や側近を就任させ、資金を流用した疑いも出ている。議会を通さず自由に使える巨額の資金が、オルテガ氏の力の源泉となった。その末端に、党と住民をつなげる「市民権力委員会」が位置づけられた。

政敵を排除し、国内の反対派を抑え込んで行われた昨年のニカラグア大統領選挙を、EUのジョセップ・ボレル外交政策上級代表は、「(今回の選挙は)独裁体制への転換を完成させるものだ」と評した。

2014年に石油価格が下落して以降、ベネズエラからの支援は激減した。社会保障費は赤字となって積み上がり、国民の支持は離れていった。独裁強化は、その反動といえる。 (続く)

<ニカラグア写真報告>裏切られた革命(3)「息子はFSLNに殺された」…抵抗の声あげる母親に会った

革命40周年式典で壇上から支持者の声援に応えるオルテガ大統領(右)とムリージョ副大統領。2019年7月、マナグア。

 

<ニカラグア>
左翼ゲリラ・サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)を率いたオルテガ氏は1979年、ソモサ一族による独裁政権を倒し革命を成功させ、84年、大統領に初当選。90年の選挙で敗北するが、06年に大統領に復帰すると、14年、大統領の再選禁止規定を撤廃し、17年には夫人を副大統領にした。18年の反政府デモへの武力鎮圧では300人以上が死亡するなど、強権的な独裁政治が批判される。21年の大統領選で勝利し、4期連続5回目の大統領に就任した。

柴田大輔(しばた だいすけ)
フォトジャーナリスト、フリーランスとして活動。 1980年茨城県出身。2006年よりニカラグアなど、ラテンアメリカの取材をはじめる。コロンビアにおける紛争、麻薬、和平プロセスを継続取材。国内では茨城を拠点に、土地と人の関係、障害福祉等をテーマに取材している。

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