
◆時効前の2021年、2022年分を刑事告発、それ以外は情報提供
2011年、2012年、2019年分ともに政治資金規正法上の公訴時効(5年)が経過しており、今回の刑事告発からは除外されているため、上脇教授は、悪質性を指摘するため時効完成分も具体的に紹介する形にしている。また、上脇教授が受けた裏帳簿の内部告発は、2011年、2012年と2019年の3年分のしかないため、それ以外の年に開催された政治資金パーティーでパーティー券を購入したのに寄付に付け替えられた人を、前述のA氏以外に特定することはできていない。
社長が確定申告をして実際に税金の返金を受けていたら、高市事務所のパーティー券を使った脱税スキームということになる。このスキームを使っていた可能性があるのは、A氏だけではなかったと思われる。
A氏の証言などを証拠に、公訴時効が成立していない2021年、2022年につき、社長の購入分を2021年は「第二支部」への寄付と、2022年は「研究会」への寄付と、それぞれ付け替えたとして、上脇教授は高市首相と会計責任者の木下氏の刑事告発に踏み切った。二人は「研究会」と「第二支部」の代表者と会計責任者だからだ。
収支報告書と裏帳簿には、A氏とともにA氏の建設会社の専務の氏名も記載されており、この専務の購入分も同じように付け替えが行われた可能性が高いとして、検察に情報提供された。
また、A氏と専務がパーティー券を購入したにもかかわらず、寄付として税制上の優遇措置を受けて税金の返金を受けていたら、所得税法違反の脱税に該当する。そして、「第二支部」や「研究会」の代表である高市首相と会計責任者の木下氏は、その脱税のほう助の罪を犯している可能性が高いとして地検に情報提供された。
◆文春と赤旗が奮闘
上脇教授は次のように話す。
「私は、内部告発を受けて高市事務所の政治資金パーティーの会計帳簿を入手しましたが、それだけでは刑事告発できませんでした。同じように内部告発を受けて週刊文春としんぶん赤旗日曜版の各記者がそれぞれ会計帳簿を証拠に取材をし、貴重な証言を各記事で紹介してくれました。しんぶん赤旗日曜版は、高市事務所が発行した2019年分の「寄附金(税額)控除のための書類」も報道で紹介したので、私はこの度刑事告発できました。
もっとも、建設会社の専務の分の付け替え疑惑と所得税法違反の疑惑は、証拠が足りないので、刑事告発ではなく、情報提供にとどめました。地検が捜査を尽くせばそれらも刑事事件として立件されるかもしれません」
実際に脱税が行われていれば、所得税法違反の公訴時効は7年のため、2022年や2021年分はもちろん、2019年分のパーティーも捜査次第では起訴が可能だ。上脇教授はこれまで多くの政治資金問題で刑事告発をしてきたが、一方で公訴時効の壁に阻まれ刑事告発ができなかった事件も多い。
今回の刑事告発は、内部告発をした情報提供者、それを受けて取材をした週刊文春としんぶん赤旗日曜版、その取材をもとに上脇教授が調査をしたことで刑事告発に結び付いた。捜査当局に渡されたバトンは重い。
■ 鈴木祐太 (すずきゆうた)
1981年香川県で生まれ。岡山、大阪で育つ。大学在学中から貧困状態にある子どもたち、特に被差別部落や在日外国人の子どもたちへの支援に関わり、小学校講師、派遣社員などを経てジャーナリズム活動を始める。フロントラインプレス所属。























