東京メトロの半蔵門駅(東京都千代田区)で8月9日に強力な発がん物質であるアスベスト(石綿)を含む糸くずがホームに落下したと11日、大きく報じられた。しかしこれは実態を的確に説明していない。正しくは、「駅ホームに石綿が降り注いだ」である。(井部正之)

破損脱落した後の配管継ぎ手部分(〇で囲ったところ)。高濃度の石綿を含む石綿布とみられる(東京メトロ提供)

◆10日に石綿飛散把握も対応せず

同社は11日、「換気設備継手部分の布地が一部破損し、送風機回転部分に巻き込まれ、天井の空調吹き出し口から破損した布地の糸くずがホームに落下する事案が発生」し、10日に「落下した糸くずがアスベスト含有素材であることが判明」と発表した。

専門業者による除去が必要になったため翌11日は始発から渋谷駅~九段下駅間の運転を見合わせ、同駅の営業を停止。ホームの清掃や吹き出し口の密閉などをしたという。

その後空気環境測定を実施し、石綿を含む可能性のある「総繊維数濃度」が検出限界を下回る空気1リットルあたり0.11本未満だったことから、「問題ない」と判断。午後7時20分に全線で運転再開した。

同社に取材をしてわかったのは、駅のホームに石綿が降り注ぐ異常な状況だった。

同社によれば、9日午前5時55分ごろ、半蔵門駅ホームの永田町駅側(南側)で「ホコリが飛んでいるのを乗務員が発見」(広報部)したのが発端だ。

「視認できるものがパラパラと舞うように落ちてきた。吹き出し口のうち、11カ所から糸くずが出ていることを視認しております」(同)

乗務員から連絡を受け、同社社員が7時2分から現地調査を開始。8時40分に吹き出し口3カ所について同社社員による「修繕が終了した」(同)という。

8月10日に石綿含有と判明したというのだが、この破損した布地(推定縦約40センチ×幅約30センチ×厚さ約3ミリ)が何かを同社に尋ねてもはっきりした回答がない。

だが写真を見る限り、継ぎ手はいわゆる「石綿布」である。

石綿布とは、おもに白石綿に少量のポリエステルなどを混ぜて、紡いだ石綿糸を使って織った布である。かつて日本工業規格(JIS)で等級(AAAA~B)によって石綿含有率80~99%と規定していた(1983年度旧環境庁委託「アスベスト製品等流通経路調査報告書」p62)。

「石綿を含む糸くず」は間違いではないが、正確には「糸くず=ほぼ石綿」であり、少なからぬ駅利用者がいる半蔵門駅のホーム上に「石綿が降り注いだ」というのが実態であろう。

筆者の取材に対し、同社は「(石綿が)大気中に舞っていた可能性は否定できない」(同)と回答した。

また同社は8月10日午後3時30分に石綿含有を把握したことを明らかにした。

ホーム上への石綿飛散を認識した以上、石綿対策としての清掃などが必要になる。当然、立ち入り禁止などの措置が必要である。

にもかかわらず、その日は立ち入り禁止などの措置を講じておらず、駅の営業を停止したのは翌11日だけだ。

このことを質すと、同社は「10日午後3時半で石綿含有がわかったが、ここでは必要な修繕をすでに行っていたとの認識でした。その後石綿の専門業者に相談し、残っている糸くずがあるかもしれないこと、清掃が必要と指摘され、深夜に運休を決めた」(同)と認識の甘さを認めた。

同社が石綿対策として11日に半蔵門駅で実施した清掃のようすを示す写真には、防じんマスクと防護服を着用した作業員のようすが捉えられている。本来ならこうした装備が必要な状況に駅利用者が置かれていたということだ。

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