(参考写真)「栄養失調で実家に戻される途中なんです」と言った下士官。細い首にだぶだぶの軍服姿だ。パンは見かねた撮影者がパンを渡したもの。2013年8月に北部地域で撮影(アジアプレス)

 

北朝鮮では、軍に入隊したその日から与えられる任務は食べ物を確保するための仕事である。

国からの資給食糧だけではとても足りないため、多くの部隊で「副業地」と呼ばれる畑でトウモロコシや野菜を栽培する。

訓練の他に、耕作、収穫、脱穀など「食うための作業」が兵士たちの日常業務だ。また、川でおかずの魚を獲り、暖房煮炊き用の薪やわらを集めるのも兵士の仕事である。
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「韓国人や外国人は軍事パレードだけを見て、人民軍は強そうだと言うれど、実体はとても戦える軍隊ではないんですよ」
落下傘部隊に所属していた脱北者の弁だ。

韓国に航空機で侵入し敵後方に降下して攪乱させるのが任務だったという。しかし、その実態はお粗末なものだったとして次のように証言する。

「まず、燃料が足らず降下訓練用の飛行機がなかなか飛ばせません。それで高い塔から飛び降りる訓練で代用していました。パラシュートの他に銃などの装備が合計70キロになるのですが、大半の兵士が背負って飛行機に上がれないのです。空腹で力が入らないから」

金正恩政権は、国営メディアで「我が国は軍事強国」だと自賛を繰り返している。そのために、ミサイル発射場面や勇ましい軍事パレードの映像を巧み使って宣伝している。

「朝鮮人民軍には全面戦争は絶対に無理。兵士は腹ペコ、軍用車両はまったく不足している上、油がなくて動かない車が多い」という。

北朝鮮が核兵器とミサイルの能力を向上させているのは間違いない。それは日韓中にとって脅威になっている。しかし、だからといって全面戦争を遂行する能力があるのかははなはだ疑わしい。

金正恩政権のプロパガンダに惑わされず、冷静に実像を見る必要がある。(石丸次郎)

(参考写真)煮炊き用に収穫後の畑からトウモロコシの葉や茎を運ぶ兵士。近隣の農民に牛車を貸し出してもらったようだ。2008年10月黄海南道にて撮影シム・ウィチョン(アジアプレス)

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