◆日本の発言は効力を持たない

8月30日、第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が終わった。西サハラ代表団の初参加はかなったが、彼らの声が聞こえないままの会議だった。サハラ・アラブ民主共和国(RASD)の外相に、話を聞いた。 30日夕刻、まだTICADの余韻を感じる横浜のホテルの一階で、ウルド・サーレク外相を待った。 発言の機会がないままに終わった会議だ。開催前日の会合では苦渋の表情を見せていたとも聞いた。どれだけ憮然とした表情を向けられたとしてもしかたはないと、覚悟していた。 はたして、ホテルのロビーに現れたサーレク外相は、穏やかな表情だった。

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サハラ・アラブ民主共和国 モハメド・サーレム・ウルド・サーレク外務大臣(8月30日撮影:岩崎有一)

カフェテリアの席に着いた。紅茶を注文した外相は砂糖をふた袋つかみ、全量を入れた。西サハラでは、甘いお茶が好んで飲まれる。西サハラの民・サハラーウィの友人たちのことを思い出した。 サーレク氏は博士号を持つ法学の専門家でもある。「まず一点」と、彼から話を切り出した。 「私たちは、日本がまちがったポジションを取っていることを知り、とても驚いています。『日本はすべてのアフリカに反し、モロッコを選んだ』と、私の友人たちも話していました。 これが一点目です。次にニ点目」と、彼は話を続けた。 「南アフリカやナイジェリアなど、日本が重要視するアフリカの大国のすべてが、RASDをサポートしています。ここで問題がひとつあります。いったい日本は、独自の戦略をもってTICADを進めているのでしょうか。それとも、モロッコの戦略に沿って進めようとしているのでしょうか。」 「どうやって(他の)アフリカ諸国ではなく、日本はモロッコを選ぶことができるのか、私は論理的な説明がどうしてもできないのです。日本がアフリカに与えたイメージは、極めて悪いものです。どうしてこのような決断をしたのでしょう。」 サーレク氏が言う「このような決断」とは、「TICAD7への“実体”の出席があろうとも、日本の立場に影響はない」とした8月27日の閣僚級準備会合での河野太郎外相の表明と、参加したにもかかわらず発言の機会がなかったことを受けてのことなのだろう。 再び、自身は法学の専門家であることをはさんだうえで、こう強調した。 「日本政府の発言は、偽りと言えるものです。違法な話しかたなのです。違法な話しかたは、効力をもちません。日本はRASDを承認していないと言いますが、TICADは、国連同様の多国間会議なのです。国連ではすべての国々が場を共にしています。北朝鮮も代表を置いています。北朝鮮を国家として承認する国もしていない国も、国連では同じ場にいるのです。ですから、多国間会議の場で承認の話を持ち出すのは、正しくありません。」

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