◆日本が理解しなければならないこと

「ここまでは、法的見解です。次に、政治の話をしましょう」と、彼は話を続けた。 「TICADの目的は2つあります。ひとつは政治的なもの、もうひとつは経済についてです。日本のアフリカへの経済的関心は、中国やロシア、アメリカと同様、ビジネスのチャンスを見出すことです。ここで、みなさんが理解しなければならないことがあります。アフリカは変わろうとしています。アフリカはもう、大国に支配されることを望んでいません。アフリカの国々は、アフリカ連合(AU)をリスペクトするパートナーを望んでいるのです。日本がこれまでにとってきた姿勢は、このAUの意志に対立するものなのです。」

サーレク氏は眼鏡を置いてひと呼吸。(8月30日撮影:岩崎有一)

サーレク氏がAUを持ち出して説明をするのは、単に、AU-EU方式を尊重すべきだと強調しているわけではなかろう。 アフリカ各地を取材していると、「モノではなく、援助ではなく、友人がほしい」との声を、あちこちで聞く。上下関係や主従関係のようなものではなく、対等な関係を築きたいのだとの思いを、アフリカの人々は強く抱いている。 そして、その関係に反するもの、つまりサーレク氏の言うような支配される関係には、極めて強い嫌悪感が抱かれる。誰にとっても、どんな国にであっても、従属を強いられるのが嫌なのは当たり前ではある。ただ、長く続いた奴隷貿易と植民地化の時代を経てきたアフリカで、そこに対する忌避感は、特に強い。 また、アジアと比べ、アフリカでの国境を超えた連帯感には強固なものがある。国籍を超えて、「私たちアフリカ人は」との意識は広く共有されている。AUの意志に対立するということは、広くアフリカと対立することなのだ、全アフリカを敵にまわすことに繋がりかねないのだと、サーレク氏は伝えようとしていたのだろう。 サーレク氏は、「次に、経済について」と続けた。(続きの第4回 >>

岩崎有一
ジャーナリスト。1995年以来、アフリカ27カ国を取材。アフリカの人々の日常と声を、社会・政治的背景とともに伝えている。近年のテーマは「マリ北部紛争と北西アフリカへの影響」「南アが向き合う多様性」「マラウイの食糧事情」「西サハラ問題」など。アジアプレス所属。武蔵大学社会学部メディア社会学科非常勤講師。
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