《自治体の平和力をどのように盛り立てるか》
吉田 そのためにも、自治体という場で市民にはどのような働きかけができるのでしょうか?

新倉 戦争非協力という課題について、僕らの思いだけで終わらせずに、そこに自治体も参加してもらって現実に力を発揮するものにしないといけませんね。
なかなか自治体は乗ってこないかもしれませんが、有事法制反対の意見書を議会で決議するよう訴えたり、「非核平和条例」や「無防備地域宣言条例」の制定をめざす運動をしたり、市民からの働きかけはいろいろあります。

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米国によるイラク戦争と占領に反対する市民のデモ。横須賀。 (撮影:ヨコスカ平和船団)

そもそも自治体は地域住民の生命・財産を守ることが第一の仕事で、軍事的な緊張を容認するようにはなっていないんです。それはまだまだこちら側の強みですから、自治体を向こう側に追いやってしまってはいけないんです。

だけど、日本の平和運動というか左翼はそういうことが下手で、すぐ糾弾して自治体を向こう側に追いやってしまうんです。
たとえば、1997年、横須賀を母港とする米空母インディペンデンスの入港を認めた小樽市を糾弾するだけで終わっていたら、現在の自治体の港湾管理権を押し立てての非核平和条例制定運動は、今日のような展望は開かれなかったと思います。

小樽市も基本的には、民間港の軍事利用は認めない立場なんです。友好親善ならということで、渋々入港を認めているんです。去年、小樽での条例制定運動の三周年の総会がありました。反対運動はがんばっているのに度たび米軍艦に入って来られているから、なんとなく小樽の皆さんは、少し元気がないように見えました。総会で、僕はそうではない、運動はいいところまで行っているというお話をしました。

米軍はくりかえし入港して、実績をつくってるつもりかもしれないけれど、小樽市が言っているのは、平時の友好親善だから入港を認めるということなんです。ここが大事なんです。逆に考えれば、軍事利用では入れないということが積み重なっているんです。

つまり、小樽市は「有事の際の軍事使用はだめだ」と言いつづけているに等しいのです。米艦船入港の既成事実を、自治体といっしょに、そのように組み立て直す。それが運動です。 だから、こちら側が先にあきらめたらいけないんですよ。

吉田 実際に自治体の長のなかには米軍の表敬訪問を断ったり、「再度の入港を歓迎しない」というコメントを出した人もいますよね。

新倉 昨年12月に、兵庫県の姫路港に米軍艦が入港したとき、市長は艦長の表敬訪問を断っているんですね。姫路港の場合、港湾管理権は兵庫県にありますが、県のある幹部は、「このまま入港が続くと、県民世論はおさまらないだろう」という発言をしています。

結局、自治体が港湾管理権を持っているかぎり、米軍艦が入港すればするだけ自治体側の抵抗感、市民の違和感みたいなものは育つんですよ。
今後、自治体の平和力をどのように盛り立てていくか。平和運動にとって取り組むべき大きな課題ですね。 ( 11へ続く >>>

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