北朝鮮最新写真報告 番外編
今回は、朔州(サクジュ)郡の「靴製造内職」にいそしむ人々の話。
平安北道の朔州郡の中心部には従業員数が数千になる大きな軍靴工場がある。もちろん国営企業だ。
この工場は、かつては郡の中心産業だったのだが、90年代に入って北朝鮮経済の破綻と、採算と合理性無視の運営で、経営不振に陥って久しい。しかし、この工場は「軍需工場」として国家の優待を受けつづけていて、閉鎖されるまでには至っていない。

だが、そのしわ寄せは工場で働く労働者と家族に向いている。
形式的に与えられる微々たる賃金と、粗末でわずかな配給食糧で暮らしていかなければならないのだ。
そこで、幹部も労働者も不正に手を染めるようになった。

布地や接着剤、ゴムなど、靴の原材料を工場から盗み出していくのだ。
そして、家で自分で靴の完成品を作り市場に卸して収入得るのである。
「工場から出る月給は2000ウォンほど。家で靴の内職して市場に売れば月収10万ウォンになる。もう、みんなやめられない」(朔州居住のアジアプレスの取材協力者。100円は約2500ウォン)
実に50倍の収入差が生じているのである。

今では、工場から材料を`調達`する者、家で製造する者、市場に卸す者、市場で販売する者と、分業体制まで生じているという。
北朝鮮では、この10年ほどの間に、市場経済が爆発的に拡大した。金正日政権は意のままにならない`市場の力`を何とか統制しようと躍起である。そのせめぎ合いが、この辺境の家庭工場にも見て取れるのである。
【2006年 撮影:リ・ジュン  解説:石丸次郎】
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`内職`をしているある家の入り口
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ゴム底を切って貼る
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