ところが、私に手渡された一粒のカラシ菜の種のような小さな仕事が、強かったハーバード行きの思いを完全に変更させてしまった。
ハーバード大学で博士号を取れば、それなりに仕事はあるはずだった。しかし、北朝鮮の記者たちの原稿を見て、「リムジンガン」を編集する仕事こそが、私が切実に願い、私を必要とし、私の能力によって可能な仕事であると思つたのである。

私私は今回の機会を通して、北朝鮮から韓国に来て初めて、自分という人間についてしっかりと考えることになった。
最初の何年間は、懸命に勉強してうまく定住していけるようになれば、韓国人になれるとばかり思っていた。

ところが何年かたってみると、韓国での毎日は、自分が北朝鮮人以外の何者でもないということを、一つ一つ確認させられる日々となったのだった。
もちろんこれは、私の韓国定住に力を貸してくださった方々のせいだという意味ではない。

むしろそのような方たちと過ごした日々は、北朝鮮の問題は、北朝鮮で生まれた人間自身が解決しなければならないという、歴史的宿命を意識させてくれる過程であった。

私は結局ハーバード行きの夢を放棄した。
何があっても、目が黒いうちは絶対に振り返ることすらすまいと思っていた北朝鮮。そこを私は向き直して、自分の未来のすべてをかけようと思う。
ハーバード大の博士帽を被ることよりも、「リムジンガン」以上の仕事は、私にはないと確信している。
詩人の道...つまり文を書いて生きること。

私の心臓が行けよという運命的なこの道を、もう一度歩んでいこうと私は決めた。
足を踏み入れたこの道は、決して平坦ではないだろう。
しかし、一瞬の後悔もすることはないと思っている。

人生を再び北朝鮮に向き合わせた「リムジンガン」編集担当 崔真伊(チェ・ジニ)

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