北朝鮮の河川の多くは、「死の川」になり果てた。燃料を採るために木を伐採し、トウモロコシを植えるために無理に畑を作ったせいで山の木がなくなってしまった。山は貴重な補修力を失った。写真の川は、土砂の流入で高くなった川底に鉱山の排出物までが黒く溜まってしまっている。この十数年の間に、北朝鮮では山河を徹底的に破壊した。 (1998年12月ハムギョン北道ムサン郡 石丸次郎撮影)

北朝鮮の河川の多くは、「死の川」になり果てた。燃料を採るために木を伐採し、トウモロコシを植えるために無理に畑を作ったせいで山の木がなくなってしまった。山は貴重な補修力を失った。写真の川は、土砂の流入で高くなった川底に鉱山の排出物までが黒く溜まってしまっている。この十数年の間に、北朝鮮では山河を徹底的に破壊した。
(1998年12月ハムギョン北道ムサン郡 石丸次郎撮影)

 

洪水被災者女性の証言 上
2006年8月、記者シム・ウィチョンは、平壌市江東郡の洪水被害地域に住む30代の女性に会い、集中豪雨と実際の被害について取材した。夫は江東郡の軍の農村建設隊の労働者である。女性本人は郡の市場で工業製品を売っている。

シム・ウィチョン:洪水の被害がどれぐらいだったのか聞きましたか?
女性:聞いたんじゃなくて、私自身が体験者ですよ。
うちは少し高い場所にあるんですけが大変でした。死ぬかと思いました。家の前がすっかり川みたいになってしまって。

夜11時から雨がずっと降っていたんです。特に気にせずにそのまま雨の音を聞きながら寝たんです。雨が降るといつも停電するでしょう。だから、ものすごい雨が降っているようでしたけれど、真っ暗だから何も分らなかったんです。

寒かったのか、寝ていた夫が私の毛布を引っ張ったんですが、「なんで毛布が濡れてるの?」って言うんです。夫はその日、トウモロコシ畑の警備に出ることになっていたんですが(注1)、その日に限って行くのが嫌だと言って朝寝坊したんです。だけどそれでよかった。夫が出かけてもし私一人きりだったら、どうなってたことやら。

慌てて起きて、デンチ(懐中電灯のこと、日本語)を付けてみたら、庭は全部水に浸かってる。
泥水と家の下水路の下水が溢れてて、台所では踏み板(オンドルの炊き口をふさぐ板)がぷかぷか浮いてるし、とんでもないことになってましたよ。

それで外に出てみたんですが、小川の水がギリギリまで上がって来てました。ザーザー音がして、こんな岩が、ゴロゴロ流れて行ってるんです。
朝になると、家の前の大きな水路は溢れていて、ええ、本当にみんな死ぬかと思いましたよ。部屋の中に入ってきた水は少しで済んで幸いでした。
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