乗客がいっぱいにならないと船は出ないのだ。
待ち時間は1時間以上かな。
思ったより時間がかかりそうだ。

行きと帰りの都合を考えると、このままでは日帰りは無理になりそう。
かといって、ここで待ち時間を惜しんでボートを1艘借り切ると、往復で100ドル以上かかる。
1日の取材としては完全に予算オーバーである。
ここも諦めが肝心か。

決断は早いに越したことはない。
すぐに町に戻ろう。
それに、今朝見た囚人たちの姿がずっと気になっている。
写真を撮れないまでも、もう一度、その姿を自分の目で確認しておきたい。

それにもう昼前が近い。
太陽が照りつけるこの炎天下、もしかしたら、囚人たちの労働は午前中だけかも知れない。
ちょっと焦る。
DSC_2426apn
【ビルマとタイの国境の町にオフィスを構える政治囚支援協会(AAPP=Assistance Association for Political Prisoners)の代表ボーチー氏。自らも元政治犯であり、今はビルマ国内で囚われている1158人(8月5日現在)の政治囚の支援のために活動を続ける】
ザガイン管区側に行けばさらにタクシー料金を稼げるため、必死に値段交渉を続けるバイクタクシーの運転手を促し、町に戻ろう、と告げる。
向こう岸でのタクシー料金をフイにした運転手はふて腐れ、「それじゃあ帰りはオマエが運転しろ、俺は年寄りで、疲れ切った」という。
これは願ったり。

私は、早速バイクにまたがり、ハンドルをしっかりと握る。
後部座席に運転手を乗せ、ブルンブルンとエンジンを唸らせ、勢いよくバイクのギアを入れた。
「チャウデー、チャウテー(怖いよー、怖いよー)」と背中にしがみつく老運転手の声を耳に、私は囚人たちが働いていた場所を目指す。

1時間半ほどかかった往路だが、復路は50分ほどで引き返すことができた。
やっぱり、危惧したとおり、見覚えのあった2カ所に差しかかっても、人ひとりっこ見えない。
働いていた囚人たちはみんな姿を消していた。
次のページへ ...

★新着記事