「父さん、母さん、兄弟、みんな揃ってるんだから、どこでどんな風に暮らすことになっても生きていけるさ。男手が何人もいるから心配ない。
どこにでも送り込みやがれ!父さんの犯した罪なんか、みんなでがんばって取り返せばいいんだ」
雨に打たれ、ずぶ濡れになった私たちを載せて、トラックは次第に山奥へと分け入って行った。そうして、厳重に鉄条網が張りめぐらされた所の前で車が止まった。

「な、なんだ、ここは?」
「『18号管理所』さ。これからあんたたちが住む所だ」
「え? こんな鉄条網の中で!?」
運転手と警護の保安員たちは車から降りて、管理所の職員らと交代した。

トラックはエンジンをかけて鉄条網の中へと入って行った。鉄条網を見送り、谷間をさらに走って行くと、またもや厳重に鉄条網を張り巡らした場所が現れた。
この鉄条網が二重に張られた中に入って行くのだと思うと、背筋がぞっとした。考えが甘かったと思った。
(つづく)

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