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2003年12月、アムステルダムのスキポール空港で、私はモロッコ・カサブランカ行きの便を待っていた。アフリカ北西部に佇む人口約2000人の街、モロッコのタルファヤを訪れるためだった。

この町を初めて訪ねたのは01年のこと。異口同音に町の「カルム(穏やか)」な様を誇りにし、異邦人である私をそっと静かにもてなしてくれた人々のことが、強く心に残っていた。

たった一度、10日間滞在したに過ぎなかったが、私にとっては、お盆や正月に祖父・祖母のもとへ旅したときに似た心持ちで、タルファヤを目指していた。

しかし、遠い。アムステルダムまでの約11時間のフライトの後、カサブランカまで3時間半。そしてモロッコ国営のCTMバスに乗り21時間後、やっとタルファヤの街が見えてくる。

CTMは実に快適なバスだった。乗り場へ出向きチケットを購入。チケットには出発・到着時刻と座席番号が印刷されている。つまり、定員以上の乗客は乗せない。バスは日本のハトバスと同じようなつくりのボルボ製で、エアコン完備。大型の荷物を預けると目の前でタグをくくりつけ、引き取り証となる半券を渡される。バスというよりも、飛行機のシステムを思わせる。

定刻通り12時30分にバスは出発。3~5時間毎に国道沿いのレストランに停まり、砂糖とミントの葉がたっぷりと入ったお茶と、円錐形の鍋で牛肉や羊肉、時にはラクダの肉を煮込んだタジンを口にしながら、私たちの一団は南下していった。
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