旅の感想を聞くと、彼も下を向いた。同じ肌の色のヨーロッパ人は白人ともみなされず、ねたましい部外者としてしか接してもらえないらしい。彼と共に旅してきた白人のオランダ人は、「白人が旅をする以上に厳しいんだ、ほんとに」と肩を下げていた。身内意識、どこに行っても相当に強い。
ときには、剥き出しの偏見もある。

例えばトーゴでは、ナイジェリア人の評判が悪い。ナイジェリアとの国境までは数十kmと距離が近く、衣料品や日用品などナイジェリアから輸入している品々も多いため、西アフリカではナイジェリア人をよく目にする。ナイジェリア人を見て後ろ指を差し、「ナイジェリアは盗人の国だからね」「簡単に人を殺す人たちだから」と、声をひそめて話す風景をしばしば目にした。

一方で、肌の色も含めて多様な出自を持つ人々が同じ国籍のもとで共に暮らしている風景もある。
ケニアからタンザニアにかけてはインドやバングラデシュにルーツを持つ人々を多く目にする。写真右の男性、アリもそうだ。

祖父の代に一家でバングラデシュよりケニアに移民してきた。アリ自身はケニア生まれのケニア育ち。コンピュータが得意で、コンピュータ関連の指導を職業としているとのこと。パスポートはケニアとバングラデシュの2つを持つが、国籍を聞かれた際はいつもケニア人と答えていると言う。

言葉も食事もケニアのものしか知らないし、友人もケニア人ばかり。何かあったときのためにバングラデシュの国籍も持っているけれど、意識はケニア人そのものだよと言って、二カッと笑った。
アリの笑顔には曇りがなかったが、その笑顔にいたるまでには、きっと多くの努力と働きかけを重ねてきたのだろうと思う。

ナミビアでは、期せずして小さな告白を聞いたことがあった。
多様性を受け入れようと、努力を始めた人の声だった。
(続く)