「8.3人民消費品」直売店の内部。きれいに陳列してあるが、がらんとして客がいない。官製メディアの報道とは裏腹に、でたらめな「8.3人民消費品」の評判はすこぶる悪い。(2008年10月黄海南道海州市 シム・ウィチョン撮影)

 

さて、前置きが長くなった。〇六年秋、中国に出てきたペク記者に、北朝鮮の庶民は風呂はどうしているのかをインタビューした。次はその時の一問一答だ。

Q:沐浴はどこでするのですか?
ペク:庶民は家でするしかないです。自宅で水を暖めて体を洗いますが、ひと月に一度か二度ぐらいでしょうか。

Q:沐浴湯(風呂屋)はないんですか?
ペク:ありますよ。でも貧しい人たちはお金がないから行く気にもなりませんよ。それに、最近は電気が来ないから照明もなくて真っ暗だし、石炭も不足して湯も暖められなくて、水が冷たいだけです。風呂場自体が中国とは比べることができないぐらい汚いです。

Q:商売で金を稼いだ人や幹部たちはどうしているんですか?
ペク:数年前から高級な沐浴湯ができましたよ。中国のとそっくりです。華僑たちが経営している所が多いんです。そこは、もちろんお湯もたっぷり出ますし、サウナもあります。一般の湯船とは別に家族湯とか夫婦湯もあります。

Q:へえー。それは別料金ですか?
ペク:はい、もちろん。ところが最近は夫婦湯は取締りが厳しくなりましたね。沐浴湯の前で保安員(警察)が見張っていることがあるんですよ。夫婦湯を利用するのが「八・三夫婦」ばっかりだから。

Q:どういう意味ですか?
ペク:一日ずっと顔突き合わせている夫婦が、わざわざ一緒に沐浴湯に行こうとしますか? 九〇%はニセ夫婦なんだと思いますよ。つまり、夫婦湯は「八・三夫婦」をターゲットにして営業を始めたんですよ。

Q:「八・三夫婦」というのは不倫だということですか?
ペク:不倫か浮気か知りませんがニセ夫婦なんですよ。規則で夫婦湯に入るには公民証(身分証)を提示して、名前を登録しなければならないんです。ある幹部が沐浴湯の職員にお金を渡して、夫婦湯に女を連れ込んで無事にやることを終えて出て行ったのですが、その噂が広まって保安署で調査することになったんです。それで、沐浴湯の前に保安員がうろうろするようになり、一ヶ月に一度立ち入り調査もするようになったとか。で、世間でなんと言っているかというと、噂を立てた沐浴湯の職員は馬鹿だ、せっかく金になるのに、噂を立てて保安員の介入を招いて収入をフイにした、と。

Q:不倫カップルを「八・三夫婦」と呼ぶなんて面白いですね。
ペク:ははは、わが国はあらゆることを偉大なる将軍様にちなんで語るではありませんか。「八・三夫婦」の取締りのことを将軍様に教えてあげたいですね。

整理者補注
市場経済の急速な増殖の中で、北朝鮮ではかつて見られなかったようなサービス業が〇三年ごろからたくさん現われるようになった。ビリヤード店、カラオケ、高級沐浴湯などがその一例である。ペク記者はその当時のことを話題にしているのだが、〇七年に入った頃から商行為に対する取締りが厳しくなり、「非社会主義現象」とみなされたサービス業は軒並み禁止されて店を閉めた。記事中にあるような沐浴湯が現在もどれくらい存在するのかは、不明である。
資料提供 ペク・ヒャン
二〇〇六年一〇月
整理 石丸次郎

★新着記事