これまでメディアを通じて我々が見せられてきたのは、特別な平壌、あるいは例外の平壌である。今回のリ・ソンヒの報告にある「一号道路」の外側の民衆の姿にこそ、平均的で平凡な平壌市民の暮らしが見えるはずだ。

最後にこの美林洞の最新情報に関して記しておこう。取材したリ・ソンヒが〇九年八月に伝えたところによると、〇九年春頃から、美林地区の露天商売が大々的に取り締まられ、美林駅の周辺と高架道路の下の空き地での露天商売は全面禁止になったそうである。

そのため、周辺の住民の不満はとても大きくなっているという。しかし、政府は市場活動を取り締まる一方で、暮らしていくための代替案を提示しているわけではない。美林洞の露天商売は早晩復活するのではないかというのがリ・ソンヒの見立てである。

※補注 一号道路について
金正日が直接関わる事項に対しては、すべからく「一号」という接頭語が付される。例えば「一号行事」と言えば、金正日が直接参加する行事のことで、「一号列車」は金正日が乗る列車のことだ。「一号道路」とは金正日が通る道路である。これらの道路は、常に舗装され、きれいに整備されていなければならないことになっている。平壌の中心部を走る「一号道路」の内側のエリアは、どこを見ても美しく整備された光景だけが目に飛び込んで来るように設計されているので、平壌を訪れた外国人は、写真でもビデオでも大した制約なくそこを撮ることができる。
代表的な一号道路としては、千里馬通り、統一通り、光復通りなどがあり、主に中区域、平川区域、大同江区域、普通江区域、モランボン区域といった平壌の中心部に集中している(リンク先の地図を参照のこと)。

平壌中心を走る「凱旋通り」。
パリのものより大きい凱旋門をくぐって平壌市内をパレードする盧武鉉韓国大統領(当時、中央のオープンカー左側)。道路脇には動員された歓迎の人波が延々と並ぶ。(2007年10月 わが民族同士HPより)

市中心部から南に向かう「統一通り」。
周辺は見栄えの良い真新しいアパートが立ち並ぶ平壌のニュータウンだ。(わが民族同士HPより)

 

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