「北は相当に焦っているという感触だ」
21日、アジアプレスの取材に韓国政府関係者はこう答えた。
北朝鮮当局が、昨年の強硬姿勢とうって変って対話攻勢に出ている背景には、経済不振のさらなる深刻化があると見られる。
外貨の多くを中国への鉄鉱石や石炭など、天然資源の切り売りに頼っている北朝鮮では、資源を輸出に振り向けると、国内生産が停滞するというジレンマに陥っている。

例えば電気事情。
北朝鮮内部の取材パートナーの金東哲(キム・ドンチョル)氏によれば、昨年11月頃から火力発電用の石炭の不足によって、平壌火力発電所、平安南道北倉(プクチャン)火力発電所の稼働率が大きく落ち、平壌市内でも電力供給が大きく麻痺している。

また、12月に中国に出てきた平壌在住の貿易業の女性は
「年初から電気事象が悪くなった。12月は、兄弟山(ヒョンジェサン)区域は午前2時間、午後2時間程度電気がくる程度。親戚のいる西城(ソソン)区域中新(チュンシン)洞は全く電気が来ない日が多い」
とアジアプレスに対して証言した。

食糧事情も、このままでは春先からの悪化が予想される。
北朝鮮では4月から穀物収穫の端境期を迎え、初秋の収穫期までは大量の食糧を外部から導入する必要がある。さらに4月から6月にかけては営農のための化学肥料、農薬も必要になる。

いずれも相当額の外貨が必要であるが、必要量を満たす外貨は、現在の金正日政権にはない。
中国からの援助分では賄いきれず、外国からの支援に頼らざるを得ないが、核実験の強行などで国際孤立が進む北朝鮮に、大量の食糧支援をする国はない。必然的に韓国に頼るしかないわけだが、当然ネックになるのは昨年の軍事挑発事件である。
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