◆放射能汚染ゴミが日常生活に
原発の放射性ゴミをリサイクルする「クリアランス制度」が施行された2005年、すでに放射性ゴミをリサイクルと称して不法投棄した事件があった。放射性ゴミのリサイクルをめぐる過去の事例から現在も共通する問題を示したい。なお、文中の年月や関係者の肩書きなどは発表当時のままである。


愛知県瀬戸市北丘町の「リサイクル」現場。当時十数万トンのフェロシルトが野積みされていた 2005年3月撮影:井部正之

 

11月7日午前9時、三重県四日市市の石原産業四日市工場前には多数の報道陣が詰めかけていた。門の前にはテレビカメラが並び、上空には新聞社のヘリコプターが舞う。

「もう数分で来るから」と三重県警の広報が教えるとカメラマンは撮影の準備をする。やがて捜査員を乗せたマイクロバスがやってくると、次々にシャッターを切る音が響いた。

マイクロバスが門を抜けて工場事務所の玄関に向かうと、それを合図にしたかのように報道陣は一斉に走り出した。捜査員が事務所に入っていく姿を撮影するのに少しでもよいカメラアングルを確保するための陣取り合戦である。
石原産業(本社・大阪市)の二度目の強制捜査はこうして始まった。かつては30年以上前、四日市公害の原因企業として、そして今回は「フェロシルト」という「リサイクル製品」をめぐる廃棄物処理法違反を問われてのことだ。

運動会さながら全力疾走するカメラマンや記者の後ろ姿を追いながら、私は気が重かった。捜査員を追って玄関に殺到するかれらの姿に、マスコミが問題の本質を報じぬまま強制捜査を最終局面に捉えて、事件の結末へと走り出していることを感じてならなかった。

◆報じられない放射能汚染
2005年10月ごろから東海地方では連日のように「フェロシルト問題」が新聞の一面トップを賑わせている。フェロシルトとは、石原産業(本社・大阪市)が白色塗料などの原料である酸化チタンを製造するさいに発生する硫酸廃液から作ったという「リサイクル製品」である。同社はこれを埋め戻し材つまり「土の代替品」として販売していた。
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