ヤン・ヨンヒ監督と石丸次郎 (撮影ナム・ジョンハク/アジアプレス)

ヤン・ヨンヒ監督と石丸次郎 (撮影ナム・ジョンハク/アジアプレス)

 

長兄は金日成の還暦プレゼントとして北朝鮮に
石丸:72年に長兄さんも帰ってますね?
ヤン:72年の3月に金日成の60回目の誕生日の「プレゼント」として行きました。朝鮮大学校で200人を帰国させようとしたそうなんですが、そのうち100人が断わったので、どうしても残りの100人を確保せなあかんということで、総連組織が長男を指名したんです。

だから、下の二人と長兄の帰国は完全に別だったと思います。上のオッパ(兄)を帰す時に、どれだけうちの両親が抵抗したか、勘弁してくれ!みたいなことを言ったかという話を、最近オモニ(お母さん)がし始めたんですよ。昨日の夜もまさしくその話で。

石丸:組織に対して?
ヤン:そう。

石丸:一人は残したいと?
ヤン:長兄の朝鮮大学校時代の同級生たちと会った事があります。兄が向こうに行って躁うつ病になったと聞いてびっくりしている人もいました。死んだことも全然知らない人もいて。オッパが北朝鮮行きを指名されたときの話を聞きました。

当時、やっぱり儒教的なこともあるのか、金日成主席の60回目の誕生日、つまり還暦祝いのプレゼントとして、帰国する学生を指名することになったんですが、長男と一人息子は指名しないという了解があって、クラスで女の子が何人か指名されたらしいんです。で、うちのオッパの場合は長男だし、ましてや下の弟が先に、それもつい数か月前に行ったばかりなので、オッパが指名されたときには全員が、「嘘だろ!あり得ない」とびっくりしたと言うんですよ。
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