石丸 貿易額のノルマがあるのですか?

貿易商2 うちの課では、年間60万ドルの利益を上げることがノルマ。それが達成されれば、あとは私たちがもらっていいことになっているが、60万ドルの上納なんてまず不可能。ほんとうにしんどい。

中国人との貿易は大変だ。すごく値切りされる。でも中国人の労賃が高くなったので、朝鮮で加工したいという会社は増えている。私は主に賃加工費の交渉する。

◇張成沢粛清の影響

石丸 張成沢氏が処刑されたが貿易会社に影響は?

貿易商2 我々にはあんまり関係ないけれど、石炭売ってた連中は大勢いなくなったのではないか。「54局」で扱っていた石炭は、今、代表部が扱っている。

※「54局」は、もともと軍の外貨稼ぎ機関だったが、張成沢氏が、自ら部長を務める朝鮮労働党行政部の傘下に移した。張氏粛清に伴い「54局」の人間が連座して多くが粛清対象になった。

※代表部とは、北朝鮮経済代表部のこと。丹東や瀋陽、北京の北朝鮮公館にある。

※彼は張成沢氏に言及するのを嫌がった。

石丸 代表部が貿易しているのですか?

貿易商2 そうではなくて、カンソン(会社)とか統戦部(統一戦線部)の連中の石炭を、代表部が中国の会社と交渉して売っているのだ。数十の会社の交渉を代表部が統括しておこなっている。

※統一戦線部が直接貿易しているのではなく傘下の会社のことである。

石丸 あなたの会社の取引も代表部が仕切っているのですか?

貿易商2 いや、賃加工貿易は石炭に比べるとまったく規模が小さいので、独自にバイヤー見つけて商談する。韓国でも日本でもいいので、なんとか中国以外の貿易相手見つけろと上から言われている。協力してもらえるとありがたい。

 

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